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2009年3月25日水曜日

トルコ・イスタンブール

3月15日から、
第5回世界水フォーラム
(16日~22日:⇒リンク)+αのため
トルコ共和国 に来ている。

水フォーラムの最中やその後の日々も、
毎日何かと余裕がなく、
全然ブログがアップできていない…。

気がついたら(?)、本日がトルコ最終日で、
明朝にはイスタンブールを出発して、
米国へ向かう。


今までの経験からして、
書きたいことが溜まればたまるほど、
それに対処できなくなり、
最終的に何も書かないまま終わってしまう。


今回のトルコもそれになりかねない。

これからは文章を少なくして、
もっとマメに書いていけるような
日記スタイルを目指して見ようかな。






2009年2月28日土曜日

学内競争的研究資金

昨年3月、大学内の競争的研究資金に応募したが、
残念ながら落選。
(⇒ 2008年2月28日「研究費の応募書類の作成」

しかし、めげずに昨年末、新しく2つの
学内研究資金に応募した。

「まあ、落選したとしても、
今後の研究のネタにしよう」と考え、
3つとも、異なるテーマで研究計画を作成した。


そしたら運良く、そのうち一つが採択された!

これはハーバードの教員向けの研究資金なので、
もちろん教授の名前で応募したのだが、
自分が作成した研究計画が、高い倍率の中、
採択されたことは、特に英語の面で、
自信へとつながった


「英語の面で」というのは、決して、
自分の英語力が高いという意味でない。
むしろ残念ながら、
研究者として自分の英語力は低い方だ(苦笑)。
実際、自分で用意した研究計画書も
稚拙な英語表現に溢れていた。

しかも、ボスのPeterは、致命的な文法と表現の誤り以外には
ほとんど手を加えずに、
自分(川崎)の研究計画書を大学に提出する(しかもPeter名義で)。

なので毎回、
「Peter、やる気なし?それとも、諦めた?」
と思っていた(笑)。


最近、別の機会で、ある制度に送られてきた
複数の研究計画書に目を通す機会があった。
それらの半分は、
非英語圏に住む外国人から送られてきたものであり、
中には、おかしな表現を含んだ英語文章も目についた。

しかし、複数の研究計画書を見比べる中で思ったのは、
多少、間違った文法や不十分な表現があったとしても、
一番大事なのは、中身の研究計画の面白さ(新規性・有用性)である。


流暢なネイティブの英語であっても、
面白くないものは面白くない。

もちろん、絶対的に英語は上手い方が良いし、
そうなるための努力は惜しむべきではないが、
ある程度の英語力とオリジナルの考えがあれば、
それなりの勝負は出来るかもしれない。


しかし、低い英語力でもやれる可能性があるということは、
逆に言うと、「英語ができない」というのは
もはや言い訳にならないということ。


「もっと英語が出来れば、、、のに。」
とは言わず(考えず)に、
進めるだけ前に突き進んでいくしかないのだろう、
きっと。



まあ、それより何よりも、
金額は大きくないけど、
こちらのPeterと研究室へ多少の還元ができて、
少しほっとした。ほっ。



↓ ノウハウって、大事ですよね…。
自分も特に習ったわけではないので、
一度ちゃんと学んでみたい。

2009年2月11日水曜日

失敗の原因

自分は、プレゼンテーションやスピーチで、
たまに(頻繁に?)大失敗をする。

昔は、確実に“練習不足”が原因だったが、
最近は以前にも増して、
事前に練習をするようになった(=大人になりました)。

それでも、とんでもない失敗をすることもある。
薄ら薄らと原因は分かっていたが、
今日、その理由を確信した。


自分は、短時間で要点を整理して喋ることが苦手なので、発表時間が、5分、10分と短い場合は、
完全な原稿を用意して、暗記する。

従って、基本的には、事前練習が十分であれば、
本番も上手くいく。


しかし、プレゼンの前や最中に、
“予期せぬ何か”が発生すると頭が真っ白になり、
一気に記憶していた原稿が吹っ飛んでしまう。


今までの経験では、
 ・プレゼン開始直前のPCトラブル
 ・プレゼン最中に、電話がかかってくる
など、自分の注意不足によって引き起こされた
アクシデントが原因となることが多かった


最近、毎週水曜日の夜は、ハーバード大のトーストマスターズ(スピーチ・クラブ)に参加している。

今日は、Humorist(ユーモリスト)を担当した。
ユーモリストは、ミーティングの冒頭で、
アメリカン・ジョークを軽くかまし、
参加者を笑わせることで、会場の雰囲気を和らげる、
という重要な役割である。

1月に初挑戦した時は、結構うけたので、
調子に乗って、本日、2度目に挑戦した。
(というか、参加者は皆、ポジティブかつ優しいので、
 何をやっても、笑ってくれる)


今回は、1分弱のジョークだったので、
原稿を暗記して、丹念に練習し、
本番に臨んだ。

前半30秒は練習通り、話を運ぶことができた、
その後、オチに向かう後半30秒に差し掛かったところで、
なぜか、遅れてやってきたメンバーが、
ドアを開けて教室に入ってくる姿に、一瞬、気を取られてしまった。
そしてその瞬間、いつもの通り、頭が真っ白になった。


最終的には、その後の大切な一文を言い忘れるとともに、最も大切なオチの単語youを、meと言い間違えてしまった…。
(youとmeで、全く意味が異なってしまう
 =オチでも、何でもなくなってしまう)


こんな些細なことで動揺するのも情けないが、
逆に、今回の経験を通して、
ちょっとした事象に対してでも、敏感に反応する自分の心理を
認識することができてよかった。


これからは、様々な本番の状況をシミュレートしながら、
練習を重ねることで、
想定外の事象にも対応できる柔軟性、および、
それに動じない図太さを身に付けることが課題である。


それにしても、今日のジョークの、オチの直後の会場の静けさは、凍りついたチャールズ・リバーの畔のようだった(写真)。

そして、白人、黒人、アジア人、ラテン系、中東系など
総勢30人の参加者が眉間にしわを寄せ、
「What?」と言わんばかりの顔で、自分を見つめる様子も、
なかなか滑稽であった。
(しかも何故か、今日のミーティングはビデオ撮影されていた。ひゃーー!)


これも貴重な体験であるが、
できれば、もうこれっきりにしたい(笑)。



<写真: 大学のすぐ側のチャールズ・リバー。
凍った川面に雪が積もっており、とてもきれい。
この日は、昼でも-10℃近くであったが、カモは楽しそうだった(?)>



↓ これ、使えます! ただ、下ネタも多いので、
公的な場所ではセレクションが大事です(笑)。

2009年1月16日金曜日

この3週間

こんにちは。お久しぶりです。

今、風邪っぴきですが、基本的に元気です。
今日のボストンは、最高気温-8°C、最低気温-14°Cだけど、意外に平気。

この3週間というか、1ヶ月間は、ひたすらフェローシップの応募書類を作っていた。フェローシップとは、一定期間(大体1年間)、大学などの研究機関から給与と研究費をもらいながら、ある程度自由に研究を進めることができる制度(ポジション)である。



自分は今年5月に帰国予定なのだが、
「できればもう少し米国で研究を続けたい!」
ということで、まずはハーバード大学のフェローシップ制度を調べた。
そして最終的に、一つのフェローシップへの応募に絞り、
書類を作成し、無事昨日(15日)に提出した。

できれば、最低でも2~3つのフェローシップに応募したかったが、
 ・ 自分の研究テーマと、先方が求めているテーマが合わない
 ・ 博士取得後の年数や国籍など、応募条件に満たない
などの理由から(後者が結構多かった…)、
最終的にたった一つの応募になった。

まあ、宝くじじゃないので、
沢山応募すれば、当選確率が上がるわけではない。
「一球入魂」「二兎を追う者、一兎をも得ず」ということで(?)、
一つのフェローシップに思いのたけをぶつけた。

たった一つのポジション探し(公募・就職活動)のために、これ程、エネルギーを注いでも良いのか?という位、時間と労力をかけた。

研究計画の作成から推薦書の手配、共同研究者の依頼などで、この1ヶ月間奔走しまくって、
沢山の方々の多大なお力添えをいただきながら、なんとか書類を完成させることができた。


最後になって、とても大事な一通の推薦書が届かない!というハプニングにも見舞われたが、それ以外はベストを尽くせたつもりだ。

(推薦書が届かないことを想定し、代替案を考えていたので、何とか対応できたが、まさか本当に送られてこないとは。。。)


応募書類の作成過程において、
沢山のことを学ぶことができたので、
機会があればまとめてみたい。


今回は、世界中からの応募が集まる、ハーバードのフェローシップなので、かなりの激戦だ。

今までの経験から、
・ 時間と労力をかけて作った「これは最高の出来だ!」という、公募書類があっさりと落ちてしまったり、
・ 逆に、ドタバタの中、短時間で作成した  「あ~、こりゃダメだ。。」という書類がが採択されてしまったりと、
結果は、本当に分からない。


でも、現時点でやれることはすべてやったし、
応募のプロセスでの学びがとても大きかったで、
非常に満足している。どんな結果でも悔いはない!


さて、11月に日本からこちらへ戻った後は、
大学内の競争的研究資金の書類を2つ準備し、
その後、このフェローシップの準備に掛りっきりだった。


ということで、自分の本業(研究)の仕事はほとんど進んでいないので
そろそろ本腰を入れなければ!
(共同研究者のTさん、これから論文作成に注力しますので、よろしくです!)

また、本ブログも週に一度の更新を目指しますので、
皆様どうぞお付き合いくださいませ。

2008年11月22日土曜日

ピア・レビュー

11月19日のCGAプレゼン(⇒CGAセミナーでの発表)の数日前、
自分のプレゼンテーションに対する
ピア・レビュー(peer review)を行った。

ピア・レビューとは、「同僚・仲間によるチェック」のことであり、
ソフトウェア開発や科研費(科学研究費)の審査などでも
取り入れられる手法である(⇒Wikipedia)。

プレゼンや論文作成の指南書などにも、
大勢の人に発表をする前や雑誌に論文を投稿する前に、
「ピア・レビューをしなさい!」
と書いている。
要は、自分の文章や発表資料を公にさらす前に、
第三者から客観的な意見をもらい、
内容・表現方法を洗練せよ!

ということである。


もちろん、それが大事なのは分かる。
しかし現実は、そんな時間的余裕はないし、
そこまでプレゼンに気合を入れる必要性もなかったので、
今までやろうと思わなかった。


しかし今回、
初めての英語での90分セミナー(60分のプレゼン)ということで、
事前に、同じ研究ツール(GIS)を使っているが、
専門分野が異なる知人に
60分のプレゼンテーションを聞いてもらった。

そして、プレゼンに関する感想を
自由に言ってもらった。


具体的には、
 ・ 意味不明な箇所
 ・ 発音が怪しい単語
を指摘してもらうとともに、
 ・ 「こうすると、もっと分かり易いでしょ?」
 という改善案
を提示してもらった。


指摘してもらった意見を聞いた感想は、
まさに「目から鱗が落ちる」思いであった。

自分が用意したプレゼン資料が、
いかに自分の思い込みの塊であるか!
を思い知らされた。


もちろん自分の中では、聞き手が、
研究の目的と手段、そして結果を、
順を追って段階的に理解できるように、
論理的なストーリーとそれを表すスライドを
用意したつもりであった。

しかし実際は、自分の考えが
聞き手に伝わっていないところが数点、存在した。


特に、自分と、専門の異なる第三者とでは、
一つの用語に対する認識が大きく異なることもある。
自分では、誰もが知っている“一般用語”と思っていても、
他の分野の人にとっては、「何それ?」ということも多々ある。


やはり人は、自分が持っている知識や経験に基づいて、
情報を処理して解釈する。
その場合、その人の持つ知識や考え方によって、
異なる方向で、情報が解釈されることも十分あり得る。


自分と専門分野が離れれば離れるほど、
その傾向が高まるのだろう。
そう考えると、広く一般の方々を対象に発表をする場合は、
理路整然とした構成のもと、分かりやすい言葉によって、
適切な方向へ聞き手を先導していくことが求められる。

専門用語は当然のことながら、
一般用語だけれど、
分野による特有の定義がある言葉(例えば、watershed, stream flow)は、
きちんと説明しないと、誤解されることがある。


「プレゼンをする上で、そんなこと当然でしょ?」
と言う人もいるかもしれない。

しかし実際に、ピア・レビューを経験することで、
「やはり相当な経験を積まない限り、
 客観的に自分の発表内容を点検することは
 極めて困難であり、第三者からの意見には到底敵わない」
ことを強く実感。
すなわち、ピア・レビューの意義はとてつもなく大きい、と。


ピア・レビューをする際、
ピアというのがキーだろう。
比較的近い立場で、気軽に意見を交わせるような関係が良い。
そして、専門分野も遠からず近過ぎずの関係が、
より効果的なのだろう。

今回、じっくりとプレゼンを聞いてもらい、
ある程度の時間をかけて、対等に議論することで、
「どこで、何が足りないのか。
どうすればより分かりやすいか?」が、
明確に浮かび上がってきた。


実際のところ、ピア・レビューをお願いする相手によって、
その意義というか、フィードバックの質と量に差が出てくるだろう。

(今回はピアといっても、自分より知的レベルが遥かに高い方だったので、
 効果が大きかったのかもしれない(笑))


同時に、自分の方でも、
「何を言われても、怒らないし恨まない。
気がついたことは何でも言ってください♪」という
オープンな雰囲気を醸し出すことが大事だろう。


ピア・レビューの意義を(今更ながら!)学べたことが、
今回の最大の収穫だったかもしれない。



↓ 研究のプレゼンでも、
肝はやっぱり“ストーリー”!

2008年10月23日木曜日

清華大学 その2

21日・22日は、清華大学にて、「第7回アジア地域の巨大都市における安全性向上のための新技術に関する国際シンポジウム(USMCA2008)」に参加。

自分は、代理発表を含む、二つのプレゼンテーションを行う。
しかも、同一セッションでの連続発表。

よく考えてみたら、一度に二つの話題について
発表を行うのは初めてだ。

まず、一本目。
目黒先生と一緒に指導をさせてもらった、
コロンビア人大学院生の修士論文の研究成果を
代理発表という形で発表。

2週間前には代理の件を伝えられていたので、
十分な準備時間はあった。
実際、それなりに時間をかけて用意をしてきた。

ところが、その発表は散々たるものであった…。

発表の直前に、先方が用意した発表用PCにて、
プレゼンで使用するムービーファイルの設定をしようと思ったのだが、
中国語OSに戸惑ってしまった。
それによって、プレゼン開始時間を大幅に遅らせるとともに、
結局設定が上手くいかないままプレゼンをスタートすることになった。

聴衆はそれ程いなかったが、
会場が広かったせいもあって(写真なし)、
ものすごく焦った状態でスタート。
そして、その心の動揺が取れないまま、
シドロモドロな状態でプレゼンを終える。 

あ~最悪…。
こっ恥ずかしいプレゼンをしてしまった。。。


当初の予定では、セッションが始まる前(休憩時間)に、ファイルを発表用PCにコピーして、ムービーファイルの設定も済ませておく予定だった。

しかし、その前のセッションの間、屋外で一人で発表練習をしていたら、
ものすごく大きなが自分の鞄に降り立った。
そして、何故かそこが気に入ったみたいで、
お尻(針?)を鞄に擦りつけ、そこから一向に離れようとしない。
結局、その蜂を追い払うのに10分くらいかかってしまい、
その結果、会場入りがセッション開始の直前になってしまった。

世の中、常にトラブルの連続だ。
発表の直前に、
が自分の鞄にまとわりつくなんて、
思いもつかない。
しかも、かなり巨大…。

しかし、これくらいのハプニングで、
動揺してしまってはいけないのだ。


そして、1本目のぐだぐだプレゼンの直後、自分がメインでやっている研究の発表。
もう終わってしまったことは仕方がないので、
気を取り直して、2本目の発表に挑む。

1本目の汚名を挽回すべく(!?)、
無理やりテンションを高める。

ほぼ当初の予定通りの時間に発表を終えた。
その後の質疑応答では、有難いことに、
とてもいいご指摘を沢山いただいた。


そして、無事二日間の日程を終え、
閉会式。

そこで、若手研究者の中からBest Paper Awardが選ばれるのだが、
その5人の中に自分が選ばれた!

小学校低学年のときに、地元の写生大会で描いた絵が
街のコンテストに入選して以来の表彰。
自分でもとても驚いた。
目黒先生やご支援いただいている多くの方々に、
太謝謝祢了。

大会実行委員会の方曰く、
「あくまでも2本目の発表に対するの賞だから。
1本目と2本目の平均での評価だったら、
駄目だったから
(笑)」

やはり1本目の発表は、相当点数が低かったみたいだ(笑)。
プレゼン・マスターへの道のりはまだまだ遠い。




≪写真・上2つ USMCAの会場(大学内)≫
≪写真・下2つ 懇親会会場(大学外)≫

2008年9月20日土曜日

手厚い大学院生支援(理工系)

 今、新年度の始まりなので、キャンパスの至る所で、学生や教員、研究者の交流を深めるための、BBQや各種パーティ、スポーツ大会などが、連日開催されている。学生のサークルやスポーツ・クラブが中心でなく、大学本部や各部局の主導によるイベントが沢山用意されているところが興味深い。
 自分が今まで関わってきた日本の大学では、「入学者向けオリエンテーリング」以外に、大学主催の学生・研究者交流会はほとんど用意されていなかった。少なくとも自分は、研究室単位での“新メンバー歓歓迎会”以上の規模のものを経験したことはない。


 ハーバードで7ヶ月間過ごす中で、このような大学・学科主催の「交流イベント」が多いことは常に驚きであるが、それと同時に、学生に対する大学のサポートがとても充実していることも日々感心している。

 例えば、自分が所属する工学・応用科学研究科(SEAS: School of Engineering and Applied Sciences)では、全ての大学院生は完全なる金銭的援助(full financial support)を受けている。授業料は全額免除の上、毎月2,300USD(約25万円)の生活費がSEASから支給される。加えて、能力・働き次第で+αが研究室から上積みされることもある。学科(例えば、下のEPS)によっては、出身地からボストンまでの往復の航空券も支給する。ある学生曰く、「貯金ができる」とのこと。


 そんな好条件での大学院入学に加えて、入学後のサポートも手厚い。
例えば、SEASが所属する教養大学院(GSAS)に入学した外国人の学生は、ハーバード・エクステンション・スクールが提供する英語の授業を50時間まで無料で受講できる(ちなみに、エステンション・コースの授業を普通に受講するとかなり高額!)。加えて、GSASでは、外国人の学生を対象に、論文の書き方を指南したり、レポートや論文・研究費申請などの研究の遂行に関する英文を添削する専属のスタッフまで雇っている(The Writing Center)。

 これは米国の研究大学では当たり前のことなのか、ハーバード特有のなのか分からないが、外国からやってくる大学院生にとってはとてもありがたい支援制度だ。学生ではない自分はこの制度を利用できないが、とても残念だ!


 将来誰かに、「日本と米国の大学院、どちらに行くべきか?」と問われたら、自分の場合、間違いなく米国を勧めるだろう。もちろん、日本で有利に就職したいのなら話は別だけど、純粋に教育や研究の環境を考えると、「(現時点では)米国に敵わない…」というのが現時点での正直な印象だ。

 ちなみに、自分の知る限り、SEASに日本人学生はいない(2008-09の入学者は分からない)。
 理学系のDepartment of Earth and Planetary Sciences(EPS)でも日本人学生は一人だけ。EPSのある先生から聞いた話では、「中国や韓国からはものすごい数の入学志願があるが、日本からは問い合わせすらほとんどない」とのこと。そして、「日本の大学でそれなりの成績を取っており、(事前に、受入先教授と相談の上)明確な研究計画書を用意できれば、合格の可能性も高いのでは?」と仰っていた。

 やる気はあるけど、お金の問題で大学院進学を断念しようとしている人は、いっそのこと、米国の研究大学に挑戦するのが良いのでは?もちろん、大学からの支援が手厚い分、入学後の生き残りは厳しく、学位取得もそれなりの時間を要するみたいだが、いわゆる“雑用”は存在しないため、研究に専念できるという。基本的に日本人は優秀なので、やる気と体力、覚悟を持っていれば、米国の研究大学で十分にやっていけるだろうから、ハーバードなどに積極的に応募するのが良いのではないだろうか?
(自分は日本の大学で学位を取得したので、こちらの大学がどれだけハードなのかよく分かっていません=僕の意見はほとんど参考になりません(笑)。でも、こんな情報を知っていたら、挑戦だけでもしただろうなぁ。)


 さて、ハーバードの学生に対する研究・教育支援を書きだしたらキリがない。
ここの学生たちは本当に恵まれて環境で教育を受け、研究を進めている(もちろん、かなりの犠牲を払ってここまでやってきているし、ここでも相当の努力し続けていますが)。特に、学部生に対する支援や機会の提供は特筆すべきものがあるが、書ききれないで断念する(笑)。それよりも、自分が書きたかったのは、「ポスドク支援」だ。前ふりとして大学院生支援のことを書くつもりが長くなってきたので次へ続く(⇒「ポスドク支援」)。

≪写真・上 新学期で学生があふれるキャンパス≫
≪写真・中・下 楽しげなイベント盛りだくさん!自分も学生になりきり(!?)、図々しく潜入≫



↓ 学生でない自分は、上述のHarvard Writing Centerのリソースを使えないので、学外のESLでWritingを習うことに。そこの先生曰く、「長年教えてきた経験から、↓の本が外国人研究者・大学院生にWritingを教えるのに最も適している」とのこと。

2008年9月12日金曜日

サマー・リサーチ・プロジェクト その3: 終了

今日は、ハーバード大の夏休みの最終日。

従って、5月下旬からサマー・リサーチ・アシスタント(その1その2)として働いていたジャネットとアントニオにとって、今日はPeter Rogers研所属の最終日。

その2で少し触れたが、ハタチ前後のやる気に満ち溢れた学部生が、大学院の研究室に所属することは、研究自体の推進を促すだけではなく、研究室全体の活性化に大きく貢献した。

彼ら二人が毎日研究室にやってきて、朝から夕方まで研究する姿は、周りの大学院生に大きな刺激を与えるだけなく、若人(?)から大御所の教授まで、みんなで和む雰囲気を作っている気がした。やはり米国といえども、多くの大学院生にとって、教授は絶対の神のような存在であるが、若い学部生にとっては教授なんて、ただのおっさん、おじさんみたいなもの(昔は自分もそう思っていた)。そんな彼らは、年齢や立場に関係なく、自由に議論したり、遊んだりする環境を自然に生み出したと言える。
もちろん、ジャネットとアントニオのパーソナリティによるところが大きいだろうし、加えて夏休みということで、教授や院生自体にも(通常セメスター時と比べて)時間的余裕があったことも大きいであろうが、みんなで食事に行ったり、アパートへ行ったり、スポーツをして遊ぶ機会が大幅に増えた。

大学当局は、このような波及効果まで狙っていたのか知らないが、サマー・リサーチ・アシスタント制度の意義は、Peter Rogers研にとても大きかったと思われる。


ジャネットには全10週間、とても頑張ってもらった。
もちろん、ハーバードにいる方はみんなものすごい才能を持っているが、やはり学部生の高い能力には驚かされっぱなしだった。個人的には、「とてもハタチ前後には思えない。大学院後期課程の学生もしくはそれ以上の研究遂行能力を持っている」という印象であった。ジャネットは応用数学、アントニオは物理学を専攻しているので、特に理科系の基礎学力が高かったのであろう。加えて、メンタル面でも、立派な大人であった。


Peterの配慮によって、自分がジャネットのプロジェクトを担当させてもらったのだが、
自分にとっても全く未知の研究テーマであったため、この数ヶ月間は試行錯誤の連続だった。

具体的には、自分で研究計画を立て、研究プロセスを設計し、それを実現するための手法やデータを用意して、実際の作業は彼女に進めてもらった。その中で、予期せぬエラーや不具合が起きれば、問題解決の方法や回避策を提示しなければならない。時には、一緒に研究手法の妥当性を議論しながら、常に“手探り”状態でのリードのもと、研究を進めて行った。

実際は、自分の目論みどおりにスムーズに研究が進む訳もなく、未解決問題を残したまま数日をやり過ごしたり、後からプロセスや手法自体に間違いがあることが発覚して、作業やシミュレーションを何度も何度もやり直す必要に迫られた。特に、夏休みの後半は、突き合った問題の解決方法が見つからず、自分からの指示が二転三転するなか、似たような作業を何十回も繰り返してもらったにも関わらず(!)、ジャネットは嫌な顔をせず、指示に従い研究を推進してくれた。

最終的には、『多少の問題点は残っているが、一つの研究ストーリを作り上げることができた。数点の懸念事項をクリアできれば、面白い論文へ発展できるのでは?』というレベルへ到達できたと思う。ほぼ0からスタートで、僅か10週間でここまでもっていければ十分でしょう!というのが自己評価。
自分のリードは60点であったが、ジャネットの働きは95点と言えよう。


こんな彼ら・彼女らを、時給$10.00で350時間も雇用できる機会なんて、滅多にないであろう。しかもその資金は、大学当局(今回は、ハーバード環境研究センター)が用意してくれる。研究室は場とテーマを与えてるだけ。研究室にとっては何ともありがたい制度だ。


この制度のお陰で、普段接することが少ない学部生と交流をすることができた。その過程で「ハーバード学部生の姿」を垣間見ることができた。やはりハーバードの中でも、学部生は特殊(貴重)な存在であり、大学院生とも少々扱いが違うことが多い。研究員として大学院に所属している限り、学部生との接触の機会は少ないが、Peterのお陰で、卒論生の手伝い(4月17日)をやらせてもらったりと、何かと学部生と交流する機会を頂いている。

非常に興味深い学部生の実態(!?)については、機会があれば改めて書きたい。


来週からは、新学期(新年度!)の始まりだ!
自分も新入生に戻ったつもりで(図々しすぎ?)、新たな気持ちで再スタートしよう!



謝辞:本研究の推進に当たっては、Arc Hydro本(現在出版準備中)の編者の一人であるHydro specialistのT氏に多大なアドバイスをいただきました。T氏のアドバイスがなかったら、ジャネットをさらに路頭に迷わせてしまったかもしれない…。T氏の親切かつ的確なアドバイスに感謝です!


≪写真・上 Peter(右から3番目)の両脇にいるのがアントニオとジャネット≫
≪写真・中・下 新学期が近付くにつれて賑やかになっていくキャンパス。ロー・スクールの学食にて(外と中)≫

2008年8月3日日曜日

プレカンファレンス・セミナー: GIS Hydro 2008 その2

午後は、Maidment教授による「CUAHSI-HIS」の紹介が中心であった。

HIS(Hydrologic Information System)とは、全米のさまざまな機関の水文観測情報、およびこれまでの研究成果を分散型ネットワークで共有するとともに、流域内の水の挙動をほぼリアルタイムで観測して、共有することができる「バーチャル集水域」の実現を目指す、という壮大な構想を持った巨大研究プロジェクトである。

米国では,研究開発支援基盤の形成として,サイバーインフラストラクチャ構想*1を推進しており,2006 年度はNSF-Wide Investments(米国科学財団・優先投資分野)5 部門の1 つとして選定されている.これは幅広い領域の科学研究をインフラ面(計算機やネットワークなど)から支援するだけではなく,その研究成果を共有し,研究者間の協働を促進することを目的としている.

その一環として,全米の100 以上の大学が参画する全米高度水文科学大学連合(CUAHSI: The Consortium of Universities for the Advancement of Hydrologic Science, Inc.) は,2004年よりHISプロジェクトを開始した。テキサス大学Maidment 教授をリーダーとしたこのプロジェクトは,これまでの水資源GIS の研究開発やそこから生まれたArc Hydroの概念や技術を基盤として,水文データの蓄積や利用に関する手法やデータの標準化などを進めている。この構想を実現すべく、サンディエゴ・スーパーコンピュータセンター(SDSC)や全米各地の大学と連携した研究開発体制を構築していることは特筆すべき点である。

2006年5月、テキサス州ヒューストンで開催された、2006 AWRA Spring Specialty ConferenceにてHISプロジェクトの進捗状況を見る機会があった。その時点ではインフラの基礎技術の検討やプロトタイプの開発がメインといった感じで、構想の実現はだいぶ先のことのように思われた。

今回の発表では、昨月にリリースされたCUAHSI HYDROLOGIC INFORMATION SYSTEM Version 1.1が紹介された。具体的な中身は、百聞は一見にしかずなので、直接下のリンクから成果物を見ていただきたい(全ての成果がWeb上で公開)。現時点では、全米50の観測ネットワークの175万地点、838万レコードの時系列データ、3億4千万のデータ値(data values)が利用可能だという。
≪≪ CUAHSI-HISトップページ リンク

Webサービス、ツール、ルール作りなど、完成度の高い多くの研究成果が公開されているが、その中で特に興味深いと感じたことを以下に列挙した。

Observation Data Model(ODM) … 各種の水文観測データをリレーショナルデータベースに格納し、検索するためのデータベース・スキーマ。

WaterML (WaterOneFlow) Web Services … WaterMLというXML形式の交換データ・フォーマットに基づく、水文データ・サーバ(データベース)とユーザの間の水文データを転送するための標準化システムWaterOneFlowというWeb serviceを開始。

HydroExcel … Excelのスプレッドシートから、上述のWaterOneFlowへ直接アクセスが可能。Excel上で、全米の水文観測データのクエリーを行い、必要なデータをスプレッドシート上で簡単に読み組むことができる。シンプルな作りである(と思われる)が、これが一番実用的で、米国中の水資源管理者/研究者に最も喜ばれるのでは?

HydroTagger … 水文情報の階層構造化(オントロジー)。

・HydroViewer version 0.5(近日中に公開予定)
水文情報の統合化を目指した、ArcGIS Serverを基盤としたWebサービス。たとえば、洪水に関するすべての記録(浸水区域ポリゴン、降水量・河川水量などの時系列データ)が全てリレーショナル・データベース上で紐付けされているので、ある水文観測地点でのハイドログラフやチャート、マップなどを、時間と空間の精度(データ解像度)を自在に変えながら、多角的にデータを分析することができる。また、各種の集計や解析の機能も付随されている。

 上述のシステムは、すべて米国内を対象としたものであるが、CUAHSIの技術を使った同様のシステムがオーストラリアの一部の地域でも進められており、今後の更なる発展が見込まれる。


 実際のところ、「バーチャル集水域」の構築とは、今の時代、誰もが考えられるアイデアかもしれない。しかし、全米の大学と強力な連携体制を作り、研究開発資金を獲得し、開発チームを組織して、実際の技術開発と運用の仕組み作りを"実現"しているところが、何よりもすごい。まさに、言うは易し、行うは難しの世界であろう。

 HISの基盤となったArc Hydroの開発は、Maidment教授の強力なリーダーシップなしには到底実現できなかったと言われている(『Arc Hydro: GIS for Water Resources』(ESRI, 2002)の冒頭より)。Maidment教授の、WebやGIS, 水文科学に関する最先端の知識や技術力に加えて、その実現に必要なチームを組織し資金を集める政治力、プロジェクトを魅力的なものにするための創造力、そして、メンバーを率先していくための情熱と強力なリーダーシップが、このHISプロジェクトも成功へ導いているのだろう。まさに、Hydro GISのカリスマである。


 実は2006年の春、Arc Hydroの応用的利用に興味があった自分は、テキサス大学オースチン校のMaidment研究室の門を叩いた。しかし、「(君が研究する)部屋が空いていない」というあまり府に落ちない理由で受け入れを断られたことがある(実際は、自分の研究テーマが彼の趣向に合わなかったことが原因だと思うが)。
 もし、あの時受け入れられていたら、今頃はテキサスのど真ん中で、カウボーイハットをかぶって馬にまたがり、このHISプロジェクトに関わっていたかもしれないと考えると、妙に感慨深かい(スミマセン、本当はオースチン校のまわりは都会です)。


≪写真・上 カンファレンスの会場周辺(陸側)≫
≪写真・下 Maidment教授の行くところ、常に人だかり(後日、UCの展示場にて)≫


*1 米国科学財団(NSF) サイバーインフラストラクチャ計画
 サイバーインフラ構築の目的は、これまでに扱えなかった大量のデータ蓄積や計算、データ流通を可能にして、人やデータ、情報、ツール、機器といった研究コミュニティにおける情報共有とそれを使いこなせる、 よりユビキタスで、網羅的なデジタル環境の実現にある。
NSF Cyberinfrastracture


↓ 米国の大学や企業に履歴書を送る人は、必見です!(5つ星)
テキサス大に履歴書を送ったときは、顔写真を入れ、年齢・性別を記入するという、日本では当たり前だけど、米国ではやっていはいけない“タブー”を犯していたことが、受け入れを認められなかった原因かもしれない(いや、それ以前に研究内容か…)。

プレカンファレンス・セミナー: GIS Hydro 2008 その1

本番のESRI国際ユーザー・カンファレンスは、月曜日から本格的に開始されるが、その前の週末には、特定の産業や分野におけるGISの活用やその技術開発に焦点を絞ったプレ・カンファレンス・セミナーが開催される*1。そのほとんどが、8:30 a.m.–5:00 p.m.の間、一つのテーマについて集中的にセミナーを行うため、特定分野におけるGISの最先端情報を入手するには最も効率が良い。

最近は、"水"GISに関わっているので、この分野の最先端を突き詰めるべく、「GIS Hydro 2008—Modeling and Managing Water Resources」に参加*2

これは、ESRIのWater resouceチームのリーダーであるDr. Dean "Water boy" Djokicやテキサス大学オースチン校のDavid Maidment教授など、Arc Hydroの開発に携わるキー・パーソンのプレゼンテーションと質疑応答により構成されるワークショップ形式の有料セミナーである。このセミナーへの参加は、2006年に続いて2回目。参加者約40人の多くは米国内の大学や政府・自治体関係者。2006年、日本からは国立環境研究所の方も参加されていたが、今回は自分一人とやや寂し。

参加者は、"水問題を扱うGISエキスパート"というよりも、"GISをツールとして利用する水資源管理者/水文学者"(Non GIS expert)の方が多いこともあり、午前は「水文学のためのGISデータとツール」や「Arc Hydroデータモデルとツールの紹介」などArc Hydroの基本事項の紹介。『Arc hydro -GIS for water resources(現在、日本語版出版準備中)の復習といったところ。
その後、水文シミュレーション・プログラム「HEC-HMS」*3や水理シミュレーション・プログラム「HEC-RAS」*4とArc Hydroの連携についての紹介があった。

と、午前中はArc Hydro関連ツールに関する説明が中心だったので、自分にとってあまり目新しいものはなかったが、流域環境や水問題に携わっていてGISに興味がある人や、Arc Hydroを使い始めたばかりのユーザにとっては、数時間でその全体像を掴むことができるので、お勧めのコースと言えよう。
午後は、その2へ続く。

≪写真・上 会場はサンディエゴ・ハーバーのすぐ傍≫
≪写真・下 Maidment教授(左)とWater Boy・Dean(右)≫



*1 プレカンファレンス・セミナー全般に関する日本語資料 リンク

*2 98年から始まったGIS Hydroセミナーの全資料がダウンロード可能 リンク

*3 HEC-HMS(Hydrologic Modeling System)とは,流域を複数の集水域が集まったツリー上のシステムと捉えて,その上流から下流までの降雨-流出過程をシミュレートするためのソフトウェアである.広範囲にわたる河川流域の地形的な空間分布とともに,都市域や各集水域の土地被覆状況を考慮して流出量を算出する.

*4 HEC-RAS(River Analysis System)は,一次元の水理解析を実行するためのソフトウェアである.定常流水面形状ならびに非定常流解析のコンポーネントが用意されており,河川の形状と流入量から水面形状の変動を計算する.


↓ 写真のお二方の著書

2008年7月23日水曜日

サマー・リサーチ・プロジェクト: その1 近況

前回の更新から、早1カ月以上が経ってしまった。。。
「週1回の更新」を掲げていながら、6月、7月はほとんどブログのことを考えることが出来なかった。

何をしていたかというと、(自分で主張するのもおかしいが)「研究に没頭していた!」のである。
5月下旬から今まで、朝から晩まで、ほとんどの時間を研究に注いできた。研究者なので、そんなの当たり前のように思われるが、日本で研究をしていた時はこのようなまとまった時間を作ることは難しかった。やはり大きな仕事をする上では、同じ12時間でも、2時間/日×6日と、6時間/日×2日では、その進行具合が著しく異なる。

もちろん、現在と日本で研究していた時は立場が違うので比較はできないが、基本的に日本で研究していた時(含む大学院)は、授業やイベントの開催、報告書の作成、事務処理、会議・打ち合わせ、セミナー、学生や訪問者の対応、その他多種多様な雑務(!?)などでひと塊の大きな時間を確保することは難しかった。土日や夏休みですら、研究関係の会議やセミナー、勉強会などのイベントが開催されることも多かったので尚更である。


ハーバードは、6月初旬の卒業式が終わってから9月中旬まで夏休みだ。
大学内は、長期・中期不在の教授や学生もいたり、通常学期よりはセミナーや勉強会などが大幅に減っているため(ほとんど無し)、全体的なアクティビティは低くなっているが、大学院の方はそれなりに動いている。

自分も5月中までは、授業を受講したり、セミナーや勉強会に参加したり、出張があったりしたので、まとまった研究の時間を確保できていた訳ではなかった(もちろん、日本にいた時以上の時間はあったけど)。

夏休みが始まり、自由な時間が大幅に増えたことが研究を没頭することになった大きな要因であるが、本来であればむしろのんびりしていい筈である。だって、夏休みなんだし!


しかし、何故自分はそれほど必死に研究を進めているのか?
その理由は、その2、その3へ続く。

2008年5月30日金曜日

KSGエグゼクティブ・セミナー

20~21日の2日間、行政大学院(KSG: John F Kennedy Schoo of Government)が開催するエグゼクティブ・セミナー、「正確かつ迅速な状況認識のための、複数組織間における地理空間情報の共有のあり方」に関する行政官向け特別プログラムに参加した(Executive Session on Situational Awareness: Assuring Cross-Boundary Information-Sharing in a Geospatial Environment)。

参加者は全部で50人程度。主催者であるKSGの教授陣をはじめとして、ハーバード地理解析センター(CGA)のセンター長、地理空間情報の共有に関わりの深い以下の組織の代表が集められた。
- 国防総省(DOD), 国土安全保障省(DHS), 環境保護庁(EPA), 陸軍(ARMY)
- 地質調査所(USGS), 海洋大気庁(NOAA), 国家地球空間情報局(NGA), 連邦航空局(FAA), 連邦食品医薬品局(FDA),職業安全健康研究所, 陸軍技術工兵隊
- カリフォルニア州環境保護局・公衆衛生局, アリゾナ州環境保護局, マサチューセッツ州公衆衛生局, ユタ州, ニュージャージー州警察,
- ニューヨーク市, フィラデルフィア市
- Google社、Microsoft高等技術研究所、インターグラフ社、Leica社、その他、ネットワーク・インターネット系企業
- Open Geospatial Consortium (OGC: 地理空間データの世界標準・相互運用を目指した非営利団体)

参加機関リストを見て分かるように、このセミナーは米国の中央省庁・州政府の高官を対象に開催しているものである。主催はKSG。CGAとOGCが共催。Microsoft, Google, ERDAS, Intergraphなどの空間情報技術関連企業がスポンサーという構成である。
大学が中心となって、企業を含めた、これだけの関連機関を一堂に会したワークショップを実現することによって、テーマとしては新しいものではないが、非常に複雑で難しい重要問題に対して、実践的に挑もうとするところが凄い。

かくいう自分も、博士論文では、「地理情報データベースによる都市防災情報システムの構築に関する研究」という、災害の事前対策や直後の緊急対応活動などの意思決定過程において、GISのデータをどう活用するのか?を研究していたので、今回のテーマは見逃せない。また、現在所属している目黒研究室でも、災害対応業務における情報処理フローの分析手法の研究などを行っているので、「これは出るしかない!」と考え、共催のCGAのメンバーとして、かなりの意気込みで(!?)参加させてもらった。

進め方としては、KSGの教授が主導のもと、
・米国での、これまでの省庁や州政府間の枠を越えた、画期的な情報共有の事例(例えば、海軍と海兵隊、連邦運輸省(USDOT)による海事情報の共有)を取りあげ、その(招待された)関係者たちに、その時の状況を話してもらうことで、ケーススタディを掘り下げる。
・それにより、問題の所在を明確化するとともに、問題解決の教訓を共有する。また今後、他のケースに応用する場合は新たな問題が生じるのか、そして、その解決法は?さらに、それを実現した場合のメリットは何か?、といったことを(あらかじめ割り振られた)キー・メンバーを中心に議論を展開し、随時、他の参加者も意見を述べたり、解決策などを提案していくという、ひたすら議論中心の進め方であった(~という手法らしい)。

参加メンバーには、ケーススタディー資料が事前に配布されており、参加者はその内容を熟知していることを前提に、セミナーは進められていく。すなわち、セミナーの開始時に、ケーススタディーの概要紹介や補足説明、プレゼンテーションなどは全くなしに、いきなり、「あの時、△△を判断したのは、〇〇省■■局から、◇◇の申し出があって、、」とケーススタディーの核心部分の掘り下げが始まる。ドライな雰囲気の(?)この会合では、冒頭での参加メンバーの自己紹介といった儀式もなく、いきなりフルスピードで走り始めるといった感じで、開始直後すぐに深い議論に突入する。そしてそれが、丸一日半続く。

当初は、やる気満々で参加したものの、ほとんどの議論に着いて行けいないというのが現実であった。。。(泣)
やはり、その事例を理解していることが前提であるが、そのためには米国の中央省庁および州政府の仕組みを熟知していることが大前提である。省庁程度なら大体分かっていたが、その下の部局(?)やその役割は全くと言っていいほど分からない(例:DHSのU.S. Secret Serviceって何?)。特に今回は、軍や防衛機関という、自分(日本人!?)にはあまり馴染みがない組織のケーススタディが多くあったため、日本の状況に置き換えて考えることも難しく、その具体的なイメージを掴むことは難しかった。
それより何より、パワーポイントなどの視覚的資料なしに(ほんの一部だけあったけど)、英語での深い議論を理解することは困難極まりなかった。残念ながら今回は、議論の上澄み的な部分だけの理解にとどまり、議論の核心部分は察することすらできなかった。なので、今回のブログでも具体的なことは書けないし、目黒研にお土産を送ることもできなかった。。。残念!

ただ、言い訳(?)として、「地理空間情報の共有のあり方」とタイトルに銘打っていた割には、一般的な情報共有の在り方に関する議論に多くの時間が割かれていた(=自分のストライク・ゾーン外)。この点は主催者および参加者側も認識しており、「今回の議論の成果をもとに、次回は地理空間情報の共有についてもっと踏み込んだ議論をしよう」という約束をして、今回のセミナーを閉幕した。まあ、何事も一度目の会合から核心に踏み込んだ議論をすることは難しく、同じメンバーでの会合を数回重ねていくことになるのだろう。


その他、個人的な感想として、
・参加者は、いずれも中央省庁・州政府の高官であり、年齢層もかなり高く、50代、60代がほとんどであった。しかし多くの方は、ICT技術全般(特に、地理空間情報)に関する広範な知識を持っており、その具体的な技術および関連問題・動向の深いところまで熟知していることには驚いた(GXML,マッシュアップ, TCP/IP, Metadata, etc.)。このような高官の方々が、地理空間情報共有の重要性について熱く語っている姿を見て、改めてこの分野での米国の“層の厚さ”を思い知らされた。自分の経験として、日本の政府・自治体の50代、60代の方で、これら技術の詳細まで理解している(=ものすごい関心を持っている)方にお会いしたことはない(もちろん、若い方は別ですよ)。


以下、メモ的に議論の項目をリスト化。本当はもっと踏み込んだことを書きたかったが、自分の憶測がかなり含まれていそうなので、やめておきます。
・データ共有の真の価値は?
・その懸念は何か?やはり軍関係機関は、機密データがたくさん。。
・今後いっそう発展していくICT時代において、中央省庁・州政府はどう対応していくか?
そのためには、若者にどのような役割を期待し、どのような環境を用意するべきか?
・これまでの地理空間情報として、莫大なストック(財産)があるが、
それを実践的な問題解決に対して、どう役立てるのか。
・バーチャル上でネットワーク化された情報と、実際の組織の違い(活動範囲、権限の違い)をどう結び付けるか。


≪写真・上≫ John F Kennedy St. この道路の右手が行政大学院(KSG)。ちなみに、左手の建物は学部生の寮。一度中に入ってみたい。
≪写真・中≫ 会場となったKSG Taubman Center
≪写真・下≫ Taubman Centerのらせん階段

2008年5月5日月曜日

試練のAIT修論発表会

国連大学では毎年、アジア工科大学(AIT)・大学院土木工学科の水工学研究グループの学生3名に対して修士論文の研究支援をしている。そのうちの一人、ベトナム人学生ティーの副指導者(External expert)として、自分も一年間、修論指導に参加させてもらっており、その最終発表会に参加すべく、今回バンコクへやってきた。

副指導とはいっても、バンコクと東京・ボストン間のインターネットでのやり取りによる“遠距離”指導が中心である。AITでの年4回の中間発表の際に、本文と発表資料を送ってもらい、内容をチェックした上でコメントをメールで返信する。それ以外に、随時お互いにメールでやりとりしたり、自分が出張でバンコクに行く際に、AITへ立ち寄り打ち合わせを行う、といった感じである。
しかし昨年は、ホーチミンからベトナム中央高地にかけての水資源管理施設の分布について、ティーと合同で調査する機会があったので、彼とは丸々1週間、研究の進め方を議論することができた(実際はほとんど雑談!)。


さて、ちょうど一年前、初めて同グループの修士論文発表会に参加したのだが、その時は修論発表&質疑応答が一人3時間であった!
内訳は、プレゼン約30分+ディスカッション約2時間+審査10分程度(学生は外で待機)+(その後、学生は部屋へ戻り)手直しに関するサジェスチョンが約20分。3人の発表会を9:00-18:00まで丸一日かけて行っていた。

AITの中でも、研究グループによって修論発表の長さは異なり、短いところでも一人1時間程度は確保されるという。もちろん、時間をかければ良いというものではないが、一つの修士論文の重みが、日本よりもかなり重そうだ(ちなみに、横国大での自分の修士論文発表は20分)。


ティーの修論タイトルは、「GIS Application on Water Infrastructure Inventory and Accessibility of Water Resources in the Upper Srepok Basin, Central Highlands, Vietnam」。
研究の内容は、①現地の自治体や住民へのヒヤリング調査を通して、水資源管理インフラ(雨量・水量観測所、ダム、堰、貯水池、井戸)についての情報収集をして、GISデータベースを作成する。②これからの人口増加や開発計画を含んだ、このデータベースをもとに、現在、そして将来(2010, 2020)の水需要および水供給を地域単位(市レベル)で予測する。③同時に、現状の住民の水資源へのアクセス評価を行い、④それらの結果をもとに、将来の水資源管理インフラ(浄水場、配水システムなど)の配置のあり方をを検討する、という流れである。


今年は、”その後の予定”(博士課程学生の公聴会)が詰まっているということで、一人2時間半の発表にとどまった。ちなみに、このグループの修論発表は、一般に公開されておらず、比較的狭い部屋で学生+審査委員4名のみで行われ、終始緊張感が漂う。

学生は20分のプレゼンテーションの後、この4人の審査委員を相手に1時間半の質疑応答に答えなければならない。しかも、この発表は「最後の仕事」ではなく、この審査委員会で指摘された事項をすべて反映させた最終版の論文を1週間以内に作り直して、審査委員に再提出する、というオマケが付いている。

やはり1時間半も質疑応答を続けていると、「○○は、▽にした方がいいよ」「□□もできるだろう」、「◎◎の結果まで出さないと、論文としては不完全」など、次々と修正事項が審査委員から出てくる。基本的に、研究者はこういう話をすると止まらないので、続々と「あれもやろう」「これもできるだろう」と審査委員から要求が出るたびに学生の表情が曇っていくのが良く分かる。

さながら圧迫面接のような雰囲気もなくはないが、鍛え抜かれた(?)AITの学生は負けじと反論したり、直すべきところは「Yes, sir」と素直に受け入れる。実際、国連大のサポートを受けているような学生は優秀かつまじめであるため、毎年、最終審査会の指摘を反映させた論文をきちんと完成させてから卒業するという。先生方も、それを見越して最後の追い込みをかけているのだろう。


卒業後、ティーは日本の大学へ進学するが、このようなAITでの厳しい試練を経験しているので、きっと日本の博士課程でも上手くやっていけるであろう。


<写真上・下>AITのキャンパス。本当は、修論発表中の写真を撮りたかったが、写真を撮れる雰囲気ではなかった。。

↓ 自分もそろそろ読み返す必要あり。

2008年5月2日金曜日

アジア工科大学(AIT)

先日、タイ王国バンコクのアジア工科大学(AIT:Asian Institute of Technology)に到着した。
ボストンを出発してからAITに到着するまでちょうど32時間30分かかった(ボストン⇒シカゴ⇒東京⇒バンコク)。ボストンの初春の陽気から、一気に真夏の地へやってきた感じである。


目的は、AITの修論最終発表会に参加するため(⇒試練のAIT修論発表会)。
国連大学では毎年AITの3名の学生に対して研究支援をしており、そのうちの一人の学生(ベトナム人)の副指導者(External expert)として、僕も一年間、修論指導に参加させてもらっている。

今日は、明日の修論発表会に向けて、学生と最終打ち合わせをした。

その後、夕食のために学食へ向かった。
AITでの滞在中は、ほとんど学食で食事をすることになる。11月に1週間、AITに滞在した時も、ほぼ3食を同じ学食で食べていた。陸の孤島AITでの生活は、この学食で格安のタイ料理とトロピカル・フルーツを食べるくらいしか楽しみはない。

昨年5月、AIT出身の国連大ボスにこの学食へ連れてきてもらった時、「自分が在学していた当時(20数年前)と同じ雰囲気ですよ」と言っていた。僕も、どことなく懐かし雰囲気がする、この学食が好きだった。

さながらフードコートみたいな雰囲気であるが、それぞれのお店は地元の方が経営しており、複数の「屋台」で構成される大食堂みたい感じであった。ほとんどが地元のお店という感じで、メニューもタイ語で書かれていたりして、どんなメニューなのか、それぞれ幾らなのか良く分からないお店もあったが、美味しいタイ料理が数十円で満喫できて、それはそれでいい感じであった。

特に、お気に入りのフルーツ・パーラー(?)には、新鮮なフルーツがたくさん置いていあり、希望に応じて、目の前でフルーツ盛り合わせを作ってくれたり、ミキサーにかけてジュースにしてくれたり、野菜サラダを作ってくれたりする。自分は、AITに来るたびにこの店に何度を足を運び、朝・昼・晩とマンゴージュースやイチゴシェイクを飲むのが日課であった。このお店は、家族で経営している雰囲気であり、基本的にはいつも同じような店員が果物を切っていた。


今回、AITに行ってショックだったことは、この学食が完全リニューアルされていたこと。
建物の中に点在していた屋台風のお店は姿を消し、「Today's special」「Western」「Asian Express」「Vegitarian」といった看板が各コナーごとにぶら下がったいた。お客は各コーナーごとに自分が欲しいものをトレーに載せて、最後にキャッシャーでまとめてお金を払う、というカフェテリア形式に姿を変えていた。デジタル式のキャッシャーで、丁寧にレシートももらえる。メニューはタイ料理のみならず、スパゲティやパン、ケーキなど多様な食事を頼めるようになっており、アメリカや日本の学食とほぼ同じ形式に様変わりしていた。(以前は私服であった)店員さんは、全員が白のユニフォームと帽子を着用し、ビニール手袋をしながら食事を用意していた。


今回のリニューアルによって、衛生管理面の大幅な改善とともに、欧米やベジタリアン向けのメニューの拡充によって、大学食堂の国際標準化(?)が進められたことは間違いないが、同時にこれまでの“独特の雰囲気”を失ってしまったことは個人的にとても残念。時代の流れなので仕方はないが、一度失ってしまったものはもう戻ってこない。
ちなみに、知り合いの学生は、「リニューアルによってメニューが大幅に減って、学生の間では不満続出」と嘆いていた。


陸の孤島・AITでの新たな楽しみを探さなければ。
(⇒試練のAIT修論発表会へ)


≪写真・上から2番目≫ AITに大量に生息する生物(名称不明)。数センチ程度のものから、1メートル近くのものまで、学内に大量に生息しているため、ボーっと歩いていると、踏みつけそうで恐ろしい。この写真のものも全長約80cm。

≪写真・下から2番目≫ 今年1月にリニューアルされた学食。 

≪写真・1番下≫ AITでの新たな楽しみ候補。楽しげで平和そうなプールに見えるが、半分は深さ4メートルなので、油断ならない。



2008年4月28日月曜日

ミレニアム生態系評価 (MA)

昨年、「ミレニアム生態系評価(MA)」(原書:「Ecosystems And Human Well-Being: Synthesis (The Millennium Ecosystem Assessment Series)」(World Resource Institute編,2005年6月発行))の翻訳に携わる機会があった。
MA 公式Webサイト

MAは、アナン国連事務総長(当時)の呼びかけによって開始され、世界中の1,500人の専門家によって、5年がかりで行われたアセスメントの結果を集約したものである。MAは、生態系の変化が人類の福利に与える影響を評価するとともに、生態系の保全と持続的な利用など、人類にとって必要な行動のための科学的な基礎情報を提供する。さらに、20世紀に人間活動が生態系に及ぼした影響と21世紀における“人類の福利”と“生態系サービス”の関係性の枠組みを示しており、これからの環境問題を考える上で重要な概念と枠組みの一つである

平たく言うと、「これまでの人間活動が生態環境に与えた影響はどの程度なのか?そして、これからの人間社会と生態系との関係はどのような方向へ向かうのか?」を、科学的なデータや知見、実際の事例をもとに分析・評価して、これからの意思決定などに使用できるよう分かりやすく整理したレポートである。

オリジナルのレポートは、全4冊・合計2,600ページにも及ぶ壮大なものであるが、その成果を意思決定者向けに要約したものがSynthesisである。
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 Current State and Trends, 948ページ
 Scenarios, 596ページ
 Policy Responses, 654ページ
 Multiscale Assessments, 412ページ
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手前味噌であるが、自分はこの書籍を重宝している。
もちろん翻訳作業中は何度も読んだが、ボストンに来てからも読み返したし、これからも読み直そうと思っている。
この本を読んだおかげで、先日の国連大の大会議やハーバードでの環境についての研究会やセミナーなど、環境に関する広範かつ深い話題にもだいぶ付いていけるようになった(もちろん、まだまだ深い部分は勉強不足で分からないところだらけだけど。。)。


MAは、複雑で難しい地球環境問題を、包括的かつ総合的に捉えるための枠組み提供ツール」と個人的に考えている。もちろん、MA・Synthesisを一冊読むだけで、地球環境問題の全貌を捉えることは不可能であるが、環境問題を考える上での大きな基本枠組みを獲得できるのではないか?

この大枠を得た上で、個別問題についての詳細なデータや情報を入手していき、その領域の理解を深めていく。それによって、その領域が他とどのような関わりがあるのか、全体の中ではどこに位置づけられるのか?その全体と構造を理解することにMAは役立つと思っている。


自分はMAを読んだことで、(それ以前に比べて)環境問題を捉える上での収納箱を持つことができた感じだ。その中身はまだまだスカスカであるが、大きな収納箱を持つことで、随時入手するさまざまな情報を、適したところへ格納可能になった。良い情報を入手しても、それを適切に保存する仕組み(箱?)を持っていないと、その情報を生かすことは難しいかもしれない。しかも、適切に構造化された収納箱を持っていると、その中身が埋まるにつれて、その知識と知識の関連付けが容易になっていく(気がする)。


MAは、こらから地球環境問題を勉強したい!という人には、お勧めの入門書と言えます。

2008年4月24日木曜日

カナダ・ハミルトン

国連大学は世界13ヶ所に研究所を持つ(東京は本部)。

その一つ、国連大学プログラム「水・環境・保健に関する国際ネットワーク」(UNU/INWEH: International Network on Water, Environment and Health)の会議に出席すべく、カナダのオンタリオ州ハミルトンに来ている。
ハミルトンは、五大湖の一つであるオンタリオ湖のほとりに位置する街であり、トロントとナイアガラ滝の中間地点である。

今回の出張の目的は、「国連大・合同メコン川研究計画会議」。
東京とカナダ、ドイツ、マレーシア、韓国の国連大研究所およびその関連機関が、合同でメコン川研究を企画するためのワークショップを3日間にわたって実施した。
それぞれの研究所で専門とする研究領域が異なるため(水文、水質、農薬管理、塩害、公衆衛生、GIS!?)、どのようにお互いの強みを生かした連携を図るのか、といったことを議論した。各国の研究所が一つの目標に向かって共同で研究計画を策定するのは初の試みであったため、今回のワークショップの成果である研究計画自身はやや漠然としたものであったが、世界に散らばる5つの機関が一堂に会して、合同で研究計画を策定するというそのプロセスの意義が大きかったと思われる。

自分は、やはりGISを中心とした情報プラットフォームの構築、およびArc Hydro modelによるwater flowデータベースの構築、水文シミュレーションとの連携に関する提案を行い、全体の研究計画に組み込んでもらった。



「国連大・ディレクターズ会議」
ちょうどメコン川研究計画会議が終わった次の日から、この会議がUNU/INWEHで開催されるということで、オブザーバーとして会議に参加させてもらった。この会議は、毎年持ち回りで各国の研究所で開催されているみたいだが、今年はここカナダでの開催。

この会議は、学長をはじめ、各国の国連大・研究所の所長や研究プログラムの代表者が集まって、今後の国連大の運営方針や研究の方向性について話し合うという、いわゆるハイレベル会合。
会議では、大学のパンフレットに書いている様なビジョンやミッションの文面についての細かな議論から、研究所内のプロジェクト・マネジメント、今後の連携先や予算といった大学全体のダイレクションに関する重大なことまで、2日間にわたり約30名で議論を行っていた。研究所が世界中に点在し、多様な人種がその運営に関わる国連大の運営方針をまとめるのは容易ではない。
感想としては、「学長や研究所長などのお偉方の業務って、ホント大変そう。。。。」


5日間の滞在を通して、各国のいろいろな方々に会うとともに、国際的組織の運営の在り方についてその一端を垣間見ることができた。

研究以外の面で学んだことは(?)、「国際社会は、完全割り勘制」。身分も年齢も性別も関係なく、食べた分・飲んだ分だけ自分で払う。
アジア方面の方々と食事をするときは、奢ったり奢られたりが基本であり、東京の国連大スタッフの方々と食事をする時も大体そうすることが多いが、各国の多様な文化を持つ人々が一堂に会するときは、完全割り勘が基本なのかもしれない。

2008年4月17日木曜日

卒業論文発表会

先日、教養学部の「環境科学&技術系」の卒論発表会があった。
ハーバードの学部は唯一、教養学部しかないのだが、卒論発表は学生が選定した専門分野ごとに行われるみたいだ※1)

マイ・ボス、Peter Rogersは今年度、二人の卒論生を指導していた。
そのうちの一人、ネパール出身のアンジャリのテーマは、①これまでのブラジルの都市開発が河川水質に与えた影響をGISを使って集水域ごとに分析し、土地被覆の変化が水質の変化にどの程度影響したのかを定量的に明らかにする。そして、②その結果をもとに、土地被覆の変化による水質変化の予測式を作成して、将来の都市開発計画に役立つような意思決定ツールを作る、という流れであった。自分も最後の方で、少しだけお手伝いをさせてもらった。
具体的には、ArcGIS Modelbuilderを使って、最後の分析ツールを作成したのだが、すこぶる優秀な彼女は、少しのアドバイスをもとに、基本的には自分でガリガリ進めていった。彼女は、これまでにGISのクラスを受講していたのでGISの基本スキルは十分なものであり、飲み込みも早かった。

と、まあ自分は大したことはやっていないが、アンジャリの勇姿を見るべく、卒論発表会に参加した。


今年の「環境科学&技術系(ES100)」卒論発表会では、2日間にわたり、14名の学部生が発表を行った。
一人あたりの持ち時間は、30分(プレゼン20分+質疑応答10分)。常に、担当指導教員+3名程度の教授・准教授が発表を聞いて、質問・コメントをするというスタイルであった。

卒論発表で、一人30分とはとても贅沢だと思う。しかも、常に4人の先生が聞いているなんて。
これは教員一人あたりの学生数が少ないハーバードだから可能なのであろうか※2)
(ちなみに、横国・建築の卒論発表は7分(5分+2分)←いくらなんでも少なすぎでは?修論発表は15分程度)


ほんの数人の発表しか見ていないので、何とも言うことは難しいのだが、その数人の発表をもとに判断すると、卒論研究の広さと深さという面では「自分が今までに日本で見てきた卒論発表と大体同じ程度のレベル」だと思う。


ただ、日本の場合(特に理工系は)、研究室単位で先輩や仲間と一緒に助け合いながら卒論を進めていくことが多いと思うが(少なくとも自分が関わってきた研究室はそうであった)、どうもこちらの卒論生は基本的には「個人」として研究を進めている雰囲気がする。研究室単位で、仲間と一緒に深く研究を進めていくスタイルと、個人で黙々と進め行くスタイルとの違いは大きいと思う。

そして、ハーバードの学部生は(基本的には)教養学部に所属しているため、専門性を高めることに力を注ぐ理学部や工学部などの学生とは、一概に比較はできなさそうだ。事実、学部生の授業選択の幅はとても広く、かつ各授業は深い内容のものが多く、卒論以外のことにかなりの時間・労力を費やしているようにも思われる。


上の感想は、現時点での主観的なものであり、まだまだ学部生の実態は分かっていないため、追跡調査が必要である。そもそも日本の卒論との比較は難しく、あまり意味はないかもしれないが、一応の感想として記すこととした。
(というか、日本の大学の卒論って、レベルが高いのでは?と個人的には考えている。もちろん、自分も含め玉石混淆だけど!?)


※1 毎年、〇〇(確認の上、後日更新)の学部生が工学・応用科学科(SEAS)で卒業論文を書く。
※2 工学・応用科学科(SEAS)の教員一人当たりの学生数は5人。
(Harvard SEAS: A brief guide for prospective undergraduate students, their parents, and the just plain curious(2008)より)

≪写真・上≫ Peter vs. アンジャリ

≪写真・下≫ 頑張れアンジャリ!


2008年3月30日日曜日

CGA その1

現在、ハーバード大学地理情報解析センター(以下、CGA)に、Research Affiliatesとして参画している。これから数回にわたって、CGAの実態を紹介をしたい。

設立の背景
 2005年春、プロボスト(学長を補佐する教務局長)と教養学部(Faculty of Arts)、建築大学院(Graduate School of Design)の各学部長のサポートによって、CGAは設立された。CGAは、 ハーバード大・定量社会科学研究所(the Institute for Quantitative Social Science)の技術基盤センターの一つとして位置づけられる。
 CGAの使命は、同大のGeospatial LibraryやMap Libraryなどのこれまでの基盤をもとに、ハーバード内外の空間情報科学の発展に寄与することである。
(ハーバードがCGAを設立した経緯の詳細については、後日改めて記載する)

 センターには、専門スタッフが常備し、研究や教育における空間解析やプロジェクトの推進、最先端空間情報技術の開発に携わる。GISのみならず、リモートセンシングやGoogle Earthなどを含んだ空間情報技術の全般を対象とする。

体制
 ⇒拡大中(1年前と比べてメンバーの大幅な増強)
・ 非常に広範な研究分野からの学際的メンバーが参画
・ ベテラン教授陣による運営委員会と若手実務者による技術アドバイス委員会との2段構成


CGA専属スタッフ
 ⇒これまでに企業や自治体などでGISの実務に関わっていたGISプロフェッショナルであり、大学内のGISサポートをメイン業務とする。いわゆる「研究者」ではない(除く、センター長)。

・ センター長 Director  1名(Faculty)
・ オペレーション・ディレクター Director of GIS Research Services 1名
・ 上級GIS専門職 Senior GIS Specialist 2名
・ GIS専門職 GIS Specialist 3名
・ ソフトウェア開発技師 Geospatial Data and Information Software Engineer 1名(図書館と兼任)


CGA 連携活動メンバー(Research Affiliates)
 ⇒CGAと実質的な連携活動を行う学内研究者

・ 教養学部 Faculty of Arts and Sceinces 1名
・ 工学・応用科学科 School of Engineering and Applied Science 1名(川崎)
・ 行政大学院 J.F.K. School of Government 1名
・ オラクル社 1名


ベテラン教授陣よる運営員会 計18名(Faculty Steering Committee)

・ 教養学部 Faculty of Arts and Sceinces 11名
・ 工学・応用科学科 School of Engineering and Applied Sciences 2名
・ 公衆衛生大学院 School of Public Health 2名
・ 医学大学院 Medical School 1名
・ 行政大学院 J.F.K. School of Government 1名
・ 建築大学院 Graduate School of Design 1名


若手による技術アドバイス委員会 計11名(Technical Advisory Committee)

・ 教養学部 Faculty of Arts and Sceinces 2名
・ 医学大学院 Medical School 1名
・ 建築大学院 Graduate School of Design 2名
・ 行政大学院 J.F.K. School of Government 1名
・ 公衆衛生大学院 School of Public Health 1名
・ Harvard-MIT Data Center, IQSS 1名
・ Harvard Planning & Allston Initiative 1名
・ 図書館 Library 2名


* 上の日本語訳と補足説明は、筆者の独自解釈に基づく

2008年3月21日金曜日

ジオリファレンス・ワークショップ

Center for Geographic Analysis (CGA; 地理解析センター)が開催する「ジオリファレンス・ワークショップ」に参加した。ESRIユーザである自分は、ジオレファレンスと言葉から、「ジオリファレンス ツールによりArcMap上でコントロールポイントを入力することで、ラスタファイルの幾何補正を行う」ことを連想した。また、「ジオコーディング」などの住所情報の位置参照を連想する。何れにせよ個人的に重要だとは認識しているが、それほど関心が強い話題ではなかったため、あまり期待をせずに参加した。

ところが、実際はとても興味深い内容の、熱い(!?)ワークショップだった(パンフレット)。
特に午前中のChallenges and Potentials of Georeferencingと題したセッションでは、主にハーバード大学の教養学部社会学系、公衆衛生大学院、医学部、建築大学院、ユダヤ博物館(Semitic museum)、中国歴史プロジェクト、生態系プロジェクト(カンザス大学)の研究者・教員が、それぞれの研究分野において、『GISのデータをどのように作成するか?』について発表した。自分が認識していた上述のような狭義の“ジオリファレンス”についてではなく、むしろ各分野における〝時空間データの作成“に関する包括的な内容であった。具体的には、データの作成(ここでいうGeoreferencing)は、どの分野でも最初に直面する大きな問題であるが、どのように位置を定義するか(位置精度の問題、分類の基準)、どのようにデータ間のリレーションを構築するか? 位置名称をどう扱うか?など、異なる分野の専門家が一堂に会して、「時空間」の捉え方について合同で話し合う場であったと言える。

今まで自分も沢山のGISデータを作成してきた経験があるが、研究の分野や目的によって、「時空間」の捉え方が大きく異なり、データ作成にあたっては非常に多様な視点があることを再認識した。

やはり分野によって、物理的・社会的なバウンダリー(境界線)の捉え方は大きく異なる。当然であるが、公衆衛生の立場では、詳細なコミュニティレベルでのデータが必要であり、米国で流通しているZipcode(郵便番号)ごとに集計された社会統計データはあまり意味を持たない。むしろこのようなデータを使って解析することは問題があるという(参考文献、後日確認の上、更新)。分野・目的による時空間の解像度レベル、位置の捉え方、バウンダリーの意味・捉え方は大きく異なり、それに従いデータベース・スキーマも変わる。

同じような現象を見ているのに、分野によって、時間と空間の捉え方が大きく異なるというのは興味深い。ハーバードでのGISを使った研究は、「世界全域」や「古代から現代まで」といった時間・空間的な幅が広いものが多い。そのため、世界中からデータを収集する際、複数の言語をどう対処するか?言語によって、対象の扱い方、分類の仕方、表現の仕方が変わるという問題にどう対処するのか?複数言語に対応するデータベースはどう設計されるべきか、などなど。
また、歴史をさかのぼると、同じ地名が、異なる時代に存在することがある(St. Petersburg, Russia 1703 - 1913, 1991- vs. St. Petersburg, Florida, USA 1892- )。また、同じ場所が、時代によって名称が異なることもある(日本の市町村合併など)。歴史データを扱う際、一般的な名称による記述が多い(江戸、日向)。これらのデータを扱う際、GISユーザはどのように対処すればよいのだろうか?


各分野の発表やその後のディスカッションを聞いていて感じたのは、『このワークショップで対象としている「ジオリファレンス」とは、空間情報を軸とした、知識の構造化への挑戦である』
ということ。分野ごとの時空間の認識に基づいて、それぞれの領域の大量のデータをどう整理するのか、そしてそのためのデータベース・スキーマはどうあるべきかを議論していた。

やはり人は、ある問題解決のためにデータを使用する。そして、それらほとんどのデータは、時間と空間の問題を含んでいるが、その整理や処理は容易ではない。やはりユーザは、自分の目的に応じて、断片的にデータおよび事象を捉えがちである。しかし、このようなワークショップへの参加によって、他分野で開発されたツールや手法を共有するだけではなく、ジオリファレンス[所謂、時空間データベースを作成すること]を、多面的に捉えて、総合的な視点から現象(データ)を認識することに寄与したのではないか、と考えられる。各発表者は、他の発表者の発表を聞いて、新しい視座や知見を持ち帰ることができたのではないか?少なくとも自分はそうであった。同様の問題意識を持つ多分野の専門家が、共通のテーマについて一堂に会してワークショップを開催することで、参加者は新しい視座や知見を持ち帰ることができるとともに、総合的な視点から現象を見ることを獲得する。

時空間情報を扱う上で誰もが直面する問題をもとに(=“ジオレファレンス”による串刺し)、学際的なディスカッションを行うのはとても良い。
もちろん、これはハーバード大学での各分野における空間情報の活用が成熟していることが前提だと思われる。また、空間情報の活用による大学内の学際的研究の推進を目指しているCenter for Geographic Analysis (CGA; 地理解析センター)が、大学内の状況を把握した上で、適切なテーマ設定のもとワークショップを企画・運営して、学内のキー・パーソンを集めてきたから実現できたのであろう。

また、ワークショップでは、空間情報に関する以下のような興味深い議論も展開された。
・多面的で複雑な「時空間」問題に対して、正しい認識・手法のもと、立ち向かっていける人材を教育する必要性(geospatial education、spatial thinking)。
・プライバシーや秘匿性の問題(public data vs. privacy data)
・データのaccuracy vs. completeness
 (データのProbability issue – probability field, uncertaintyの問題など)


参加者の研究分野は人文系、社会科学系から自然科学系まで多様であったが、やはり同じ問題意識を持っている人たちの集まりなので、とても盛り上がったし、一聴衆であった自分もとても勉強になったし、参加していて楽しかった。

今回、自分がきちんと理解できたのはきっと半分程度だろう(根拠なし)。
残り半分を聞き逃した(理解できなかった)のは悔しいが、「あせらず、無理せず、着実に」、これから頑張りましょう!

2008年2月28日木曜日

研究費の応募書類の作成

こちらに来て3週目から早速、大学内の競争的研究資金2つに応募することになった(大学内のFaculty向けなので、もちろん教授名義での応募)。

お陰でこの数日は缶詰め状態(大袈裟)だったけど、何とか形になってきた。
一応国連大で、英語で研究資金の応募書類を作った経験はあったが、その時は日本の機関向けだったのでやや気持ち的に楽であった。しかし今回はハーバードの先生方が対象だし、しかも研究計画や応募書類の書き方をもとに、現在の受入先教授(Peter)に自分の力を判断されることになるだろうから、それになりにプレッシャーであった。

というか、それ以上に研究費の獲得に貢献することで、Peterに若干でも恩返しをしたい!という気持ちが大きかったので、かなりの労力を注ぎ込んだ。もちろん、大学内といえでも競争は激しく、研究費の獲得は容易ではないだろうけど、現時点でのbestは尽くしたつもり。2つとも、4月に審査結果発表!

≪写真≫ Peter Rogers研究室の入っているPierce Hall(1901)