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2008年8月29日金曜日

スポーツと感性

 Peter Rogers研究室にて、サマー・リサーチ・アシスタントをしている学部生とその友人たちとで、バスケット・ボールをした。

 最後にバスケット・ボールを触ったのはいつだろう?
 中学・高校とバスケ部の端くれだったが、大学入学以来、全くと言っていいほど、触っていない。というか、球技全般から遠ざかっていた。

 思い返せば、大学院博士課程に進学して以来、ほとんどスポーツをしなく(できなく)なってしまった。
それ以前は、ウインドサーフィンやスノーボード、マウンテンバイクなど、むしろ体を動かすことが中心の生活であったが、一転、大学と家、研究対象地、出張先の往復ばかりの生活へ突入した。

 そんな中での、十数年ぶりのバスケット・ボール。しかも周囲は全て、ハタチ前後の学部生。自分でも、やや無理があるとも思ったが、本場アメリカでのバスケの機会(大げさ)、参加しない理由なぞ存在しない!

 最初は、リサーチ・アシスタントのアントニオとジャネット、その友人の4人で、2 on 2でプレー。
 その後、見知らぬ韓国人カップルが、「ハイ、ガーイズ!俺らも入れてくれよ!」といきなりの飛び入り参加表明。そして、「オーライ!メーン!」とみんなで歓迎ハイタッチをして、いきなり3 on 3ゲームの開始。そこから30-40分間、ひたすらプレーして、最後は「ナイス・プレイ!」と全員でお互いに固い握手を交わし、最後は再会を誓いグッド・ナイト!でお別れ、という何ともフレキシブル(アメリカン?)な雰囲気。


 実際のプレーは、高校生の頃と同じように動けたような気がする(注・自己判断に基づきます)。
 自分の想像以上に、体は当時の感覚を覚えているもの。十数年ぶりのバスケット・ボールは本当に楽しかった。気がついたら学部生たちと一緒に、ずっと動き回っていた。Tシャツが汗一杯で重くなったのはいつ以来だろう(そういえば、去年の目黒研の合宿でも汗だくになったなぁ)?まだまだ、若造には負けないぞ(笑)。


 バスケット・ボールなどのダイナミックなチーム・スポーツは、全身の感覚と頭をフル活用して、全体の流れを把握した上で、その場その場で、次の動きを瞬時に予想し、即座にアクションを起こすことが求められる。やはり、ハードな状況下で、このような経験を積んでいくことは、人間の感性というか、動物的な直感力を研ぎ澄ますことに、大きく寄与するに違いない。
 久しぶりのプレーの印象として、自分一人で行うプレー(つまりシュート)は、ほぼ昔と同じ感じでできたが、速攻中のクイック・パスなど、瞬時に周囲の動きを予測する必要のあるプレーは、周囲とのタイミングが上手く図れずに、失敗することが多かった。
 やはりこの数年、大学という、どちらかというと静的な判断を求められる環境に身を置く時間が長かったので、動的判断力が鈍っていたのかもしれない(まあ、大学ではそんなもの要らないかぁ)。


 大学の時はウインドサーフィン、修士の時はスノーボード、マウンテン・バイクにはまった。
 何れも大自然の中を、ただひたすらに猛スピードで突っ走る。その快感は、言葉にできないくらい爽快で、大きな悦に浸れるのだが、同時に、予測不可能な自然が相手なゆえに、いきなり転倒して、海や山に放り投げ出されるリスクを常に背負う。
 目まぐるしく変化する状況の中では、一瞬一瞬、次のアクションを予想する必要がある。むしろ、考えるというよりも、直感にもとづく瞬時の判断に応じて、無意識的に迫りくる状況に対応し続けなければならない。
 きっと数年前までは、そのような感覚がそれなりに培われていたのであろうが、近年、何というか、頭でっかちになりつつあるのかもしれない(アカデミックで生きる場合、むしろ、そちらの方が正しい生き方なのかもしれない…)。



 昔は何も考えずに、いろいろなスポーツを、ボーっと楽しんでいた。しかし、上述のようなことを認識しながら、より真剣にスポーツと向き合い、かつ、そのフィードバックを人生に活かすことを意識していれば、スポーツ・プレーヤーとしてももっと成熟できたであろうし、そこから取得できた知識や感覚もより大きなものであったのだろう、と今更ながら考えてみた(いやいや、まだまだこれから(笑))。

 というか、久し振りのバスケットはとても感慨深かったので、大げさであるが、人生などと照らし合わせて、いろいろ思いにふけってしまった(笑)。


 早速、来週のバスケも約束した。週末はチャールズ・リバーでカヤックだ。
 これまで数年間で蓄積されていた(スポーツに対する)うっ憤を晴らすべく、そして、鈍っているであろう全身の感性を取り戻すべく、街が雪で覆われるまでの間は、屋外で大いに体を動かそう。


≪写真 GISセンターの裏のバスケットコートにてアップ中の学生たち≫

↓ 同じタイトルの本を発見!

2008年7月25日金曜日

サマー・リサーチ・プロジェクト その2: リサーチ・アシスタント制度

 これはとても興味深いハーバード大学の制度なので、後日、きちんと整理しようと思うが、要は“夏休み期間中、学部生が大学院の教員、研究者のアシスタントをしながら、各分野の基本項目や研究手法を習得することを目的とした大学内の有給インターンシップ制度”。

 今夏、Peter Rogers研究室には2人の学部生がアシスタントを希望してきた。一人はPeterの研究プロジェクト(持続可能な都市の在り方)を希望する学部3年生のアントニオ。もう一人は自分の研究プロジェクト(気候変動と土地利用の変化がメコン川の水量に及ぼす影響分析)を希望してくれた学部2年生のジャネット。

 自分のリサーチ・アシスタントを務めてくれるジャネットは“応用数学”が専攻ということで、自分のプロジェクトとは大幅にかけ離れているのだが、昨年、アフリカ・ザンビア共和国へボランティアに行った際、水資源問題に強い関心を持ったことが、このプロジェクトを選ぶ契機になったという。ちなみに、プロジェクト開始時の彼女の水とGISに関する知識・経験はほとんど0だった。

 そんなジャネットと、10週間、プロジェクトを一緒に進めることになったのだが、さすがハーバードの学部生、仕事を進めるのが尋常じゃなく早い!

 プロジェクト開始後の1週間は、いきなりArc HydroおよびHEC-GeoHMSHEC-HMSの演習を独習してもらった※1。GISの入門をすっ飛ばして、いきなりArc HydroおよびHec-GeoHMSを習得させるのはかなりの荒修行である。例えるなら、スノーボードの未経験者を、「最初に滑り方のノウハウは教えるので、自分で独習して滑れるようになってくれ!」といきなりハーフパイプへ突き放すようなものである。

 こう書くと自分は鬼軍曹みたいだが、全350時間というアシスタント期間の制約の中で、ただのお手伝いで終わらせるのではなく、彼女の成果にもなるような一仕事を経験させるためには、悠長に基礎から手取り足取り教える時間など無い。それ以上に、自分がこれまでに授業などで学生を見てきた経験から、「ハーバードの学部生は、(入学前は当然のことながら)入学後にかなり鍛えられているので、彼ら/彼女らの能力をフル回転させるのような難しい課題を与えないと、彼らにとってはただの退屈な業務になってしまう」という考えがあった。
 また、それまでに全く面識のない学生と10週間を過ごして、一つの成果を出すためには、かなり初期の段階で本人の能力・趣向を見極めた上で、その後のスケジュールを調整したり、場合によっては研究の方向性を変更する必要がある。そのためにも、オーバーワーク気味の課題を敢えて与えることにした。

 そして実際に、演習を開始した第1周目の進行は、自分が想定していたよりも遅かった。「まあ、ハーバード大生とは言っても、さすがにいきなりのArc Hydroは酷過ぎたなぁ」と思って、ちょっぴり反省&安心(!?)してみたりもしたが、一通り演習を終えた第3週目以降の彼女の業務処理の速さと精度、さらに応用力の高さには驚かざるを得なかった。例えるなら、スノーボードを始めてたった数週間なのに、ハーフパイプを自在に滑走し、さらにはバックサイド180などのワンメイクも決められるようになっていたのである(スノボ2級、取れます)。専攻が応用数学ということで、もともと高いコンピュータ・レテラシーを持っており、プログラミングや数値処理に慣れていたことが大きな要因だと考えられるが、まだ学部2年生である彼女の業務処理能力は、感覚的には修士2年もしくは博士課程の学生以上であると思われる。

 プロジェクト開始時は、こちらが用意したプログラムや業務を彼女に指示しながら進めてもらうという関係(上下)であったが、プロジェクトが進むにつれて、彼女の進行速度がグイグイと上がっていくので、後半は後ろから猛スピードで迫ってくる彼女を適切にリードするために、自分も次の方向や手法を全速力で探り続けるという関係(ほぼ同等?)へ変わっていた。実際、彼女は2カ月弱でArc Hydro&HEC-HMSマスターへ変貌し、他の大学院生へ教えるレベルに至った

 こんな感じで、自分よりもはるかに優秀なアシスタントをリードすることの大変さとともに、このような熱心な学生たちと切磋琢磨し(張り合い?)ながら研究を進めることの楽しさを体感している。


 自分が、夏休みにハードに研究に打ち込んでるのは、このサマー・リサーチ・アシスタント制度によって学生に尻を叩かれている(叩いてもらっている)ことも大きな一因である。この制度は、「学部生が、大学院での研究活動を経験することで、研究の基礎を習得することが目的」と謳っているが、もしからたら、熱心な学部生を大学院へ送り込むことで、教授・研究者に“夏休みでもハードに研究を進めろ!”ということを大学本部が暗に狙っているのかもしれない(!?)。
何れにせよ、Peter Rogers研では、2人の若い学部生が研究室で熱心に研究を進めている姿が、他の大学院生にも刺激を与え、研究室全体に活気を与えるという波及効果を生んでいる


自分も、学部生と一緒に研究を進めることはとても良い機会なので、ハードだけど充実した夏休みを過ごすことが出来ている。このような機会を与えてくれたPeterには、つくづく感謝である。このサマー・リサーチ・プロジェクトを熱心に進めていることのもう一つの理由は、実はこの“Peter”にある。その3へ続く。



※1 手前味噌ですが、ご興味のある方はどうぞ。
「水資源GIS アプリケーションArc Hydro の概説と米国における事例紹介」(PDFファイル)