本番のESRI国際ユーザー・カンファレンスは、月曜日から本格的に開始されるが、その前の週末には、特定の産業や分野におけるGISの活用やその技術開発に焦点を絞ったプレ・カンファレンス・セミナーが開催される*1。そのほとんどが、8:30 a.m.–5:00 p.m.の間、一つのテーマについて集中的にセミナーを行うため、特定分野におけるGISの最先端情報を入手するには最も効率が良い。
最近は、"水"GISに関わっているので、この分野の最先端を突き詰めるべく、「GIS Hydro 2008—Modeling and Managing Water Resources」に参加*2。
これは、ESRIのWater resouceチームのリーダーであるDr. Dean "Water boy" Djokicやテキサス大学オースチン校のDavid Maidment教授など、Arc Hydroの開発に携わるキー・パーソンのプレゼンテーションと質疑応答により構成されるワークショップ形式の有料セミナーである。このセミナーへの参加は、2006年に続いて2回目。参加者約40人の多くは米国内の大学や政府・自治体関係者。2006年、日本からは国立環境研究所の方も参加されていたが、今回は自分一人とやや寂し。
参加者は、"水問題を扱うGISエキスパート"というよりも、"GISをツールとして利用する水資源管理者/水文学者"(Non GIS expert)の方が多いこともあり、午前は「水文学のためのGISデータとツール」や「Arc Hydroデータモデルとツールの紹介」などArc Hydroの基本事項の紹介。『Arc hydro -GIS for water resources』(現在、日本語版出版準備中)の復習といったところ。
その後、水文シミュレーション・プログラム「HEC-HMS」*3や水理シミュレーション・プログラム「HEC-RAS」*4とArc Hydroの連携についての紹介があった。
と、午前中はArc Hydro関連ツールに関する説明が中心だったので、自分にとってあまり目新しいものはなかったが、流域環境や水問題に携わっていてGISに興味がある人や、Arc Hydroを使い始めたばかりのユーザにとっては、数時間でその全体像を掴むことができるので、お勧めのコースと言えよう。
午後は、その2へ続く。
≪写真・上 会場はサンディエゴ・ハーバーのすぐ傍≫
≪写真・下 Maidment教授(左)とWater Boy・Dean(右)≫
*1 プレカンファレンス・セミナー全般に関する日本語資料 リンク
*2 98年から始まったGIS Hydroセミナーの全資料がダウンロード可能 リンク
*3 HEC-HMS(Hydrologic Modeling System)とは,流域を複数の集水域が集まったツリー上のシステムと捉えて,その上流から下流までの降雨-流出過程をシミュレートするためのソフトウェアである.広範囲にわたる河川流域の地形的な空間分布とともに,都市域や各集水域の土地被覆状況を考慮して流出量を算出する.
*4 HEC-RAS(River Analysis System)は,一次元の水理解析を実行するためのソフトウェアである.定常流水面形状ならびに非定常流解析のコンポーネントが用意されており,河川の形状と流入量から水面形状の変動を計算する.
↓ 写真のお二方の著書