2008年8月5日火曜日

ESRI UC その2 技術編

引き続き、カンファレンス初日のJack Dangermond社長の基調講演より、自分が気になったところをメモ的に記す。その1は、これからのGISに関する概念的な面に焦点を当てたが、その2では技術的な項目についてその詳細は触れずに、発表の全体像を記述することを目指す。


■■■ 今が、GIS on the Webの始まりの時である ■■■
 (これまでもESRI社は、Web GISの開発にかなりの力を注いできたが)今がまさに、WebとGISの能力の融合の時であり、これまでWebで主流であった単なる地図化と視覚化のはるか彼方へ、すなわち本来のGIS活用の本質である″解析能力”をWeb上でも発揮できる時がきた。

≪≪ ArcGISは、(特に政府や自治体などの組織において)共通のオペレーションを行うための、中央融合センター[Fusion center]となりつつある。
 ⇒ 緊急危機管理、住民の生活を守ること、国家安全保障、インフラ管理、軍事活動における情報の統合環境を提供する

≪≪ ArcGIS Serverも、様々な形式のマッシュアップ(複数の異なるWebサービスを統合する能力)をサポートすることで、新しい情報の共有や統合、コラボレーションを生み出していく。
(大学で出席した様々なGIS関連の会議でも、「MashUp!」はもはや合言葉(!?)。実際、こちらでも他分野における具体的な取り組み事例を見せてもらったが、これから本当に面白いことができそうな予感)

≪≪ Web GISは次の時代に突入している。
 マッシュアップの技術とArcGIS Serverの飛躍的な進展により、誰もが簡単に(知らぬ間に)Web上でGISのデータや解析に触れることができるような、オープンで、よりアクティブで高度な地理空間サービス(Geo-services)の提供が可能になりつつある。
 実際、Web上では高精度なベースマップや各種統計データ、画像データ、地質や水などの主題データが世界中のさまざなところで利用可能になってきている。これによって、GISエキスパートは、短時間でとても生産性の高い仕事をすることができる環境が整いつつある。


■■■ ArcGISバージョン 9.2⇒9.3 マイナー・アップグレード ■■■
 2年前のカンファレンスでは、ArcGIS9.2のリリースに合わせて、「netCDFなどを含んだ、時空間データ全般に対する解析機能・視覚化が拡充されました!」「カートグラフィ機能が進化しました!」「Google Earthとの連携が可能になりました!」「ArcGIS Serverでの編集・解析機能が追加されました」など、ドーン、ドーン、ドドーーンと結構派手に(?)、ArcGIS DesktopおよびServer系製品の新機能を紹介することが、初日のESRI基調講演の中心であった気がする。
 しかし今回のカンファレンスでは、そのような新しい機能や製品の紹介は少なく、その1や上に記述したように「GISのこれから」についての概念的ビジョンが中心で、技術的な項目に関しては、(バージョン9.3では)とにかくソフトウェアの使い勝手、安定性、信頼性の向上に努めたということを強調していた感がある。

■■■ ESRI社のテクニカル・サポートの大幅強化 ■■■
 前述のソフトウェアの安定性・信頼性向上とも関係があるのだろうが、ESRI社全体として、(ソフトウェア?テクニカル・サポート?)の質が38%向上したと強調していた(ただし何に対してかは、聞き逃した)。今年の2月から5月までの間に、テクニカル・サポートの対応時間が90%削減されたとも言っていた。それを表すプレゼンのグラフはやや恣意的な気もしたし、詳細は良く分からなかったが、とにかくサポートに力を入れていることを強調していた。


以下、全体的な感想

 技術的な面については、その1に書いた内容や上述の社会インフラとしてのArcGIS、Web GISをより一層確立するために、ソフトウェアの使いやすさ、安定性、信頼性の向上に、会社全体としてこれまで以上に力を入れていくことを強く表明しているような印象を持った。現場の一ユーザとしては、何よりもそれがアリガタイことである!
 (例年の初日のように)ArcGISの新機能や製品についての技術的な面を強調するよりは、今回のように、今後のGISについて、Jack社長およびESRI社のビジョンをJack社長の自ら、自分の言葉でプレゼンテーションしてもらうのが一番だと思う。技術面への関心が高い人には少し物足りなかったかもしれないが、やはりこのカンファレンスの参加者(Jack曰く、GIS Professiionals)は、GISを使って、何か楽しいこと・新しいことをやってみたい、世界を良くすることに貢献したい、という人が多いのだろうから、その人たちに長中期的なビジョンを明確に示すことはその意義が大きいと思う。


以上、筆者の意訳なので、誤訳、思い込みが含まれている可能性アリ。