前回、「手厚い大学院支援(理工系)」を長々と書いてしまったが、本来、自分が書きたかったのはこちらのトピックだ。新年度の始まりということでキャンパス内では、各種イベントが目白押しだが、その中で自分が注目したのは「ポスドク・オリエンテーション・ミーティング」だ。
ポスドクとは、博士研究員のことで、研究に専念するためのポジションである。通常1年~数年の任期が付いており、立場としては大学院生と教員の中間に位置するようなものだ(Wikipedia/ハーバードのポスドクの定義)。
自分は今、ポスドクではないが、横国大にて同様のポジションを経験したこともある。そこで、「このオリエンテーションでは、一体何をやるのだろう?」と興味津々で、参加してみた。
はじめに、ハーバードには約2,000人のポスドクがいて、そのうち58%が外国籍であるという紹介があった(3,800人という数字もあるが、これは連携のHospital Postdocsを含んだ数値であるため、実質は2,000人とのこと)。これは全米の大学でも断トツの数であり、2位のスタンフォード大学を大きく引き離していた(正確な数値は忘れたが、1,000人ちょっと。5,6位のMITのポスドクは850人程度)。ちなみに、ハーバード・カレッジ(学部)の1学年は1,600人である。それ以上のポスドクを抱えるハーバードでは、Office for Postdoctoral Affairsというポスドク支援専門の事務局が存在する(Website)。
このポスドク支援室(以下、OPA)は、ポスドク自身の研究活動から、一緒にボストンへやってきたパートナーや家族の生活までに渡って全般的に支援してくれる。このオリエンテーション(昼食付き)では、OPAおよび関連の事務局のスタッフが、以下の項目について懇切丁寧に説明していた。
・ 福利厚生・契約関係
保険や税金繰延勘定(TDA)、チャイルド・ケア、その他ポスドクが受けられるベネフィットの紹介。公募による“チャイルド・ケア奨学金”という制度があったり、同性愛のパートナーを認めているところも米国らしい。ハーバードには3種類のポスドク雇用形態が存在し、それぞれ受けられるベネフィットは異なるが、一言でいうと「かなり手厚いサービスが受けられる!」といった印象だ。
・ 学内研究リソース
複雑なハーバード学内組織や各種サービスなどの紹介
・ 研究費の申請などにおける学内手続き
通常、研究費の申請手順は大学によって異なっており、外部からやってきた人間にとっては、その時にやってみないと良く分からないことが多い。このオリエンテーションでは、予算申請オフィスの担当者が、そのプロセスを資料付きで詳細に説明
・ 悩みや問題解決の手段
ポスドクの肉体や精神的な悩みについて、無料・匿名で相談できるカウンセリング・オフィスや、雇用者(ボス)や同僚との関係の悪化や長時間残業、セクハラ、差別などの問題が発生した場合の調停や救済を支援する学内オンブズマン・オフィスの紹介があった。
とかく微妙な立場のポスドクにとって、悩みや問題は尽きない。自分も、以前かなり苦しんだ時期もあった。(実際に使うか使わないかは別にしても)最初の段階で、このようなリソースや手段があることを周知してもらえることは、多くのポスドクにとって心強いはずだ。
その他、「ポスドクのための税金勉強会」、「研究室運営ワークショップ」、その他の就職活動支援イベントを毎月予定している。10月にはオクトーバー・フェストにかけて、「Postdoctoberfest! Happy Hour」を、大学のパブで開催するというのはユーモアに溢れている。
もちろん、(米国だし!?)実際どこまで支援してくれるのかは不明であるが、多くの不安を抱えてハーバードへやってきたポスドクに対して、「あなたとそのパートナー、家族全員を、広範に支援しますよ!」というメッセージをスタートの段階で示すことの意義はとても大きい。そして、専門の事務室が実在することは心強い。きっと、初めてのポスドクでハーバードへやってきた人たちはその有難みを感じないかもしれないが、日本のポスドク経験者の多くは、大学がこのような機会を用意してくれることに対して、涙を流して感動するだろう(笑)。少なくとも自分は、オリエンテーションに参加しながら、「ここなら骨を埋めても良い!」と深く感動した(まあ、ポスドクで骨を埋めることなんてあり得ないのだが(笑))
学生への手厚い支援に加えて、ポスドク支援も欠かさない。
世界中から優秀な学生・研究者が、この大学へ集まってくるものうなずける。
≪写真 学部生の寮。彼らはここで4年間を過ごす≫
↓ これからの大学の生き残り競争は熾烈だ!それ以前に、自分の生き残りの方が熾烈だけど(苦笑)
2008年9月20日土曜日
手厚い大学院生支援(理工系)
今、新年度の始まりなので、キャンパスの至る所で、学生や教員、研究者の交流を深めるための、BBQや各種パーティ、スポーツ大会などが、連日開催されている。学生のサークルやスポーツ・クラブが中心でなく、大学本部や各部局の主導によるイベントが沢山用意されているところが興味深い。
自分が今まで関わってきた日本の大学では、「入学者向けオリエンテーリング」以外に、大学主催の学生・研究者交流会はほとんど用意されていなかった。少なくとも自分は、研究室単位での“新メンバー歓歓迎会”以上の規模のものを経験したことはない。
ハーバードで7ヶ月間過ごす中で、このような大学・学科主催の「交流イベント」が多いことは常に驚きであるが、それと同時に、学生に対する大学のサポートがとても充実していることも日々感心している。
例えば、自分が所属する工学・応用科学研究科(SEAS: School of Engineering and Applied Sciences)では、全ての大学院生は完全なる金銭的援助(full financial support)を受けている。授業料は全額免除の上、毎月2,300USD(約25万円)の生活費がSEASから支給される。加えて、能力・働き次第で+αが研究室から上積みされることもある。学科(例えば、下のEPS)によっては、出身地からボストンまでの往復の航空券も支給する。ある学生曰く、「貯金ができる」とのこと。
そんな好条件での大学院入学に加えて、入学後のサポートも手厚い。
例えば、SEASが所属する教養大学院(GSAS)に入学した外国人の学生は、ハーバード・エクステンション・スクールが提供する英語の授業を50時間まで無料で受講できる(ちなみに、エステンション・コースの授業を普通に受講するとかなり高額!)。加えて、GSASでは、外国人の学生を対象に、論文の書き方を指南したり、レポートや論文・研究費申請などの研究の遂行に関する英文を添削する専属のスタッフまで雇っている(The Writing Center)。
これは米国の研究大学では当たり前のことなのか、ハーバード特有のなのか分からないが、外国からやってくる大学院生にとってはとてもありがたい支援制度だ。学生ではない自分はこの制度を利用できないが、とても残念だ!
将来誰かに、「日本と米国の大学院、どちらに行くべきか?」と問われたら、自分の場合、間違いなく米国を勧めるだろう。もちろん、日本で有利に就職したいのなら話は別だけど、純粋に教育や研究の環境を考えると、「(現時点では)米国に敵わない…」というのが現時点での正直な印象だ。
ちなみに、自分の知る限り、SEASに日本人学生はいない(2008-09の入学者は分からない)。
理学系のDepartment of Earth and Planetary Sciences(EPS)でも日本人学生は一人だけ。EPSのある先生から聞いた話では、「中国や韓国からはものすごい数の入学志願があるが、日本からは問い合わせすらほとんどない」とのこと。そして、「日本の大学でそれなりの成績を取っており、(事前に、受入先教授と相談の上)明確な研究計画書を用意できれば、合格の可能性も高いのでは?」と仰っていた。
やる気はあるけど、お金の問題で大学院進学を断念しようとしている人は、いっそのこと、米国の研究大学に挑戦するのが良いのでは?もちろん、大学からの支援が手厚い分、入学後の生き残りは厳しく、学位取得もそれなりの時間を要するみたいだが、いわゆる“雑用”は存在しないため、研究に専念できるという。基本的に日本人は優秀なので、やる気と体力、覚悟を持っていれば、米国の研究大学で十分にやっていけるだろうから、ハーバードなどに積極的に応募するのが良いのではないだろうか?
(自分は日本の大学で学位を取得したので、こちらの大学がどれだけハードなのかよく分かっていません=僕の意見はほとんど参考になりません(笑)。でも、こんな情報を知っていたら、挑戦だけでもしただろうなぁ。)
さて、ハーバードの学生に対する研究・教育支援を書きだしたらキリがない。
ここの学生たちは本当に恵まれて環境で教育を受け、研究を進めている(もちろん、かなりの犠牲を払ってここまでやってきているし、ここでも相当の努力し続けていますが)。特に、学部生に対する支援や機会の提供は特筆すべきものがあるが、書ききれないで断念する(笑)。それよりも、自分が書きたかったのは、「ポスドク支援」だ。前ふりとして大学院生支援のことを書くつもりが長くなってきたので次へ続く(⇒「ポスドク支援」)。
≪写真・上 新学期で学生があふれるキャンパス≫
≪写真・中・下 楽しげなイベント盛りだくさん!自分も学生になりきり(!?)、図々しく潜入≫
↓ 学生でない自分は、上述のHarvard Writing Centerのリソースを使えないので、学外のESLでWritingを習うことに。そこの先生曰く、「長年教えてきた経験から、↓の本が外国人研究者・大学院生にWritingを教えるのに最も適している」とのこと。
自分が今まで関わってきた日本の大学では、「入学者向けオリエンテーリング」以外に、大学主催の学生・研究者交流会はほとんど用意されていなかった。少なくとも自分は、研究室単位での“新メンバー歓歓迎会”以上の規模のものを経験したことはない。
ハーバードで7ヶ月間過ごす中で、このような大学・学科主催の「交流イベント」が多いことは常に驚きであるが、それと同時に、学生に対する大学のサポートがとても充実していることも日々感心している。
例えば、自分が所属する工学・応用科学研究科(SEAS: School of Engineering and Applied Sciences)では、全ての大学院生は完全なる金銭的援助(full financial support)を受けている。授業料は全額免除の上、毎月2,300USD(約25万円)の生活費がSEASから支給される。加えて、能力・働き次第で+αが研究室から上積みされることもある。学科(例えば、下のEPS)によっては、出身地からボストンまでの往復の航空券も支給する。ある学生曰く、「貯金ができる」とのこと。
そんな好条件での大学院入学に加えて、入学後のサポートも手厚い。
例えば、SEASが所属する教養大学院(GSAS)に入学した外国人の学生は、ハーバード・エクステンション・スクールが提供する英語の授業を50時間まで無料で受講できる(ちなみに、エステンション・コースの授業を普通に受講するとかなり高額!)。加えて、GSASでは、外国人の学生を対象に、論文の書き方を指南したり、レポートや論文・研究費申請などの研究の遂行に関する英文を添削する専属のスタッフまで雇っている(The Writing Center)。
これは米国の研究大学では当たり前のことなのか、ハーバード特有のなのか分からないが、外国からやってくる大学院生にとってはとてもありがたい支援制度だ。学生ではない自分はこの制度を利用できないが、とても残念だ!
将来誰かに、「日本と米国の大学院、どちらに行くべきか?」と問われたら、自分の場合、間違いなく米国を勧めるだろう。もちろん、日本で有利に就職したいのなら話は別だけど、純粋に教育や研究の環境を考えると、「(現時点では)米国に敵わない…」というのが現時点での正直な印象だ。
ちなみに、自分の知る限り、SEASに日本人学生はいない(2008-09の入学者は分からない)。
理学系のDepartment of Earth and Planetary Sciences(EPS)でも日本人学生は一人だけ。EPSのある先生から聞いた話では、「中国や韓国からはものすごい数の入学志願があるが、日本からは問い合わせすらほとんどない」とのこと。そして、「日本の大学でそれなりの成績を取っており、(事前に、受入先教授と相談の上)明確な研究計画書を用意できれば、合格の可能性も高いのでは?」と仰っていた。
やる気はあるけど、お金の問題で大学院進学を断念しようとしている人は、いっそのこと、米国の研究大学に挑戦するのが良いのでは?もちろん、大学からの支援が手厚い分、入学後の生き残りは厳しく、学位取得もそれなりの時間を要するみたいだが、いわゆる“雑用”は存在しないため、研究に専念できるという。基本的に日本人は優秀なので、やる気と体力、覚悟を持っていれば、米国の研究大学で十分にやっていけるだろうから、ハーバードなどに積極的に応募するのが良いのではないだろうか?
(自分は日本の大学で学位を取得したので、こちらの大学がどれだけハードなのかよく分かっていません=僕の意見はほとんど参考になりません(笑)。でも、こんな情報を知っていたら、挑戦だけでもしただろうなぁ。)
さて、ハーバードの学生に対する研究・教育支援を書きだしたらキリがない。
ここの学生たちは本当に恵まれて環境で教育を受け、研究を進めている(もちろん、かなりの犠牲を払ってここまでやってきているし、ここでも相当の努力し続けていますが)。特に、学部生に対する支援や機会の提供は特筆すべきものがあるが、書ききれないで断念する(笑)。それよりも、自分が書きたかったのは、「ポスドク支援」だ。前ふりとして大学院生支援のことを書くつもりが長くなってきたので次へ続く(⇒「ポスドク支援」)。
≪写真・上 新学期で学生があふれるキャンパス≫
≪写真・中・下 楽しげなイベント盛りだくさん!自分も学生になりきり(!?)、図々しく潜入≫
↓ 学生でない自分は、上述のHarvard Writing Centerのリソースを使えないので、学外のESLでWritingを習うことに。そこの先生曰く、「長年教えてきた経験から、↓の本が外国人研究者・大学院生にWritingを教えるのに最も適している」とのこと。
2008年9月17日水曜日
早起き
最近、早朝に目がパチリと覚めることが多い。
日によっては、4時台もあれば、5時台もあるし、6時台もある(普段は、7時~8時の起床)。
そのまま、すくっと立ちあがって、行動を開始することもあれば、頭は冴えているけど体を起こせず、そのまま2度寝することもある。
基本的に、自分は朝に弱いため、いつまでも寝ていたいタイプだが、ここのところ少し違う。こちらに来て7カ月が過ぎて、いろいろと焦っていることも原因かもしれない。周りの日本人でも、こちらにきて半年過ぎたくらいの人たちは、同様の焦りやプレッシャーを持っているようだ。今はちょうど、そんな時期かもしれない。
誰もいない早朝の街中を、ヘッドホンから聞こえる英語に合わせて、黙々と発音練習をしながら歩いて行くは気持ちいい。道路も静かだし、人目を気にせず大きな声を出せるので、普段よりも集中力が高まる気がする(若干、近所迷惑かもしれないけど(笑))。これをきっかけとして、完全朝方への意向を目指していこうかな。
≪写真 朝6時、自宅から西方を望む≫
日によっては、4時台もあれば、5時台もあるし、6時台もある(普段は、7時~8時の起床)。
そのまま、すくっと立ちあがって、行動を開始することもあれば、頭は冴えているけど体を起こせず、そのまま2度寝することもある。
基本的に、自分は朝に弱いため、いつまでも寝ていたいタイプだが、ここのところ少し違う。こちらに来て7カ月が過ぎて、いろいろと焦っていることも原因かもしれない。周りの日本人でも、こちらにきて半年過ぎたくらいの人たちは、同様の焦りやプレッシャーを持っているようだ。今はちょうど、そんな時期かもしれない。
誰もいない早朝の街中を、ヘッドホンから聞こえる英語に合わせて、黙々と発音練習をしながら歩いて行くは気持ちいい。道路も静かだし、人目を気にせず大きな声を出せるので、普段よりも集中力が高まる気がする(若干、近所迷惑かもしれないけど(笑))。これをきっかけとして、完全朝方への意向を目指していこうかな。
≪写真 朝6時、自宅から西方を望む≫
2008年9月14日日曜日
新学期!
明日から新学期(新年度)のスタート。
先週末からキャンパス内には、夏休みから戻ってきた学生や先生方、新入生などが溢れている。自分も心機一転、明日から沢山のことを始める。
■ 講義の受講
学生じゃないので講義を取る必要はないが、秋学期から以下の二つを受講する。
一つは、「水資源システム設計(Engineering Sciences 261. Design of Water Resource Systems)」。
最近、自分の研究テーマとして水資源管理なるものを取り扱っているが、実は(?)建築学科出身の自分は、これまでに一度も「水文学」や「水資源学」の講義を受けたことはない!今更であるが、きちんと基礎から勉強し直す必要あり。
二つ目は、「ミクロ経済理論(Economics 1010a. Microeconomic Theory)」。
昨年、東京で銀行や証券会社が開催する「無料金融入門」に数回参加したが、経済のことは未だ分からない。自分の研究とはほとんど関係ないが、将来の研究テーマやビジネス(!?)の新規開拓を目指した基盤づくりの一貫として受講。
またその背景として、米国で“自分は環境とGISの研究をしている”と言うと、「それだったら経済の勉強をしなさい!」と何人かの人にアドバイスをもらっていた。ハーバードの学部生の3人に1人は、自分の専攻に関係なく、マクロ経済とミクロ経済の基礎の授業を受講してるみたいし、一般教養として0から勉強してみよう。
たかが講義二つとは言っても、一つの講義が週180分+セクション(補講)60分で、宿題の量もものすごいので、真剣にやるとかなり大変そう。ちなみに、ハーバードの学生は、半期に3~4の講義を取るのが一般的らしい(4つでも相当しんどいとのこと)。
■ 夜間英語コース
ボストンの中心街にある教会では、外国から来た大学院生や研究者を対象とした、“アカデミック・イングリッシュ・コース”を格安で提供している。教会といっても、宗教に関係なく、誰でも受け入れてくれるし、超低料金の割にレベルの高い講義とテキストを提供してくれるのがありがたい。
Park Street Church
自分は、これまでに週に一回、「発音」クラスを受講していたが、今期からは思い切って週2回(「発音」と「ライティング」)へペースアップの予定。
■ 夜間ダンス・レッスン
ハーバード・ダンスチームは、大学内外の初心者を対象に、これまた格安でレッスンを提供している。
何を隠そう、自分はかなりの音痴でリズム感がない(らしい)。これまでの人生で、音楽の成績はほとんど2(1を取ったこともある…)であった自分にとって、ダンスの習得は遥かなる夢であるが、近場で安く受講できる機会があるので、週2回を目標にレッスンに通うことを決意。中南米の場末の街酒場で、地元人の生演奏に合わせて、サルサを踊ることを夢見て…。
Harvard Ballroom Dance Team
もちろん、自分の仕事(研究)の遂行や、研究費申請や各種報告書の作成などの雑務は、これまで通り遂行しなければならない。
確実に、自分の(時間・能力の二つの面での)容量を越えているのは分かっているが、つまらなかったり、無理そうであれば、途中で辞めればいいでしょう。今、やらないで、いつ始めるよ?
まずは、そんな軽い気持ちでスタートしよう。
だって新年度の始まりなんだし!
先週末からキャンパス内には、夏休みから戻ってきた学生や先生方、新入生などが溢れている。自分も心機一転、明日から沢山のことを始める。
■ 講義の受講
学生じゃないので講義を取る必要はないが、秋学期から以下の二つを受講する。
一つは、「水資源システム設計(Engineering Sciences 261. Design of Water Resource Systems)」。
最近、自分の研究テーマとして水資源管理なるものを取り扱っているが、実は(?)建築学科出身の自分は、これまでに一度も「水文学」や「水資源学」の講義を受けたことはない!今更であるが、きちんと基礎から勉強し直す必要あり。
二つ目は、「ミクロ経済理論(Economics 1010a. Microeconomic Theory)」。
昨年、東京で銀行や証券会社が開催する「無料金融入門」に数回参加したが、経済のことは未だ分からない。自分の研究とはほとんど関係ないが、将来の研究テーマやビジネス(!?)の新規開拓を目指した基盤づくりの一貫として受講。
またその背景として、米国で“自分は環境とGISの研究をしている”と言うと、「それだったら経済の勉強をしなさい!」と何人かの人にアドバイスをもらっていた。ハーバードの学部生の3人に1人は、自分の専攻に関係なく、マクロ経済とミクロ経済の基礎の授業を受講してるみたいし、一般教養として0から勉強してみよう。
たかが講義二つとは言っても、一つの講義が週180分+セクション(補講)60分で、宿題の量もものすごいので、真剣にやるとかなり大変そう。ちなみに、ハーバードの学生は、半期に3~4の講義を取るのが一般的らしい(4つでも相当しんどいとのこと)。
■ 夜間英語コース
ボストンの中心街にある教会では、外国から来た大学院生や研究者を対象とした、“アカデミック・イングリッシュ・コース”を格安で提供している。教会といっても、宗教に関係なく、誰でも受け入れてくれるし、超低料金の割にレベルの高い講義とテキストを提供してくれるのがありがたい。
Park Street Church
自分は、これまでに週に一回、「発音」クラスを受講していたが、今期からは思い切って週2回(「発音」と「ライティング」)へペースアップの予定。
■ 夜間ダンス・レッスン
ハーバード・ダンスチームは、大学内外の初心者を対象に、これまた格安でレッスンを提供している。
何を隠そう、自分はかなりの音痴でリズム感がない(らしい)。これまでの人生で、音楽の成績はほとんど2(1を取ったこともある…)であった自分にとって、ダンスの習得は遥かなる夢であるが、近場で安く受講できる機会があるので、週2回を目標にレッスンに通うことを決意。中南米の場末の街酒場で、地元人の生演奏に合わせて、サルサを踊ることを夢見て…。
Harvard Ballroom Dance Team
もちろん、自分の仕事(研究)の遂行や、研究費申請や各種報告書の作成などの雑務は、これまで通り遂行しなければならない。
確実に、自分の(時間・能力の二つの面での)容量を越えているのは分かっているが、つまらなかったり、無理そうであれば、途中で辞めればいいでしょう。今、やらないで、いつ始めるよ?
まずは、そんな軽い気持ちでスタートしよう。
だって新年度の始まりなんだし!
2008年9月12日金曜日
サマー・リサーチ・プロジェクト その3: 終了
今日は、ハーバード大の夏休みの最終日。
従って、5月下旬からサマー・リサーチ・アシスタント(その1・その2)として働いていたジャネットとアントニオにとって、今日はPeter Rogers研所属の最終日。
その2で少し触れたが、ハタチ前後のやる気に満ち溢れた学部生が、大学院の研究室に所属することは、研究自体の推進を促すだけではなく、研究室全体の活性化に大きく貢献した。
彼ら二人が毎日研究室にやってきて、朝から夕方まで研究する姿は、周りの大学院生に大きな刺激を与えるだけなく、若人(?)から大御所の教授まで、みんなで和む雰囲気を作っている気がした。やはり米国といえども、多くの大学院生にとって、教授は絶対の神のような存在であるが、若い学部生にとっては教授なんて、ただのおっさん、おじさんみたいなもの(昔は自分もそう思っていた)。そんな彼らは、年齢や立場に関係なく、自由に議論したり、遊んだりする環境を自然に生み出したと言える。
もちろん、ジャネットとアントニオのパーソナリティによるところが大きいだろうし、加えて夏休みということで、教授や院生自体にも(通常セメスター時と比べて)時間的余裕があったことも大きいであろうが、みんなで食事に行ったり、アパートへ行ったり、スポーツをして遊ぶ機会が大幅に増えた。
大学当局は、このような波及効果まで狙っていたのか知らないが、サマー・リサーチ・アシスタント制度の意義は、Peter Rogers研にとても大きかったと思われる。
ジャネットには全10週間、とても頑張ってもらった。
もちろん、ハーバードにいる方はみんなものすごい才能を持っているが、やはり学部生の高い能力には驚かされっぱなしだった。個人的には、「とてもハタチ前後には思えない。大学院後期課程の学生もしくはそれ以上の研究遂行能力を持っている」という印象であった。ジャネットは応用数学、アントニオは物理学を専攻しているので、特に理科系の基礎学力が高かったのであろう。加えて、メンタル面でも、立派な大人であった。
Peterの配慮によって、自分がジャネットのプロジェクトを担当させてもらったのだが、
自分にとっても全く未知の研究テーマであったため、この数ヶ月間は試行錯誤の連続だった。
具体的には、自分で研究計画を立て、研究プロセスを設計し、それを実現するための手法やデータを用意して、実際の作業は彼女に進めてもらった。その中で、予期せぬエラーや不具合が起きれば、問題解決の方法や回避策を提示しなければならない。時には、一緒に研究手法の妥当性を議論しながら、常に“手探り”状態でのリードのもと、研究を進めて行った。
実際は、自分の目論みどおりにスムーズに研究が進む訳もなく、未解決問題を残したまま数日をやり過ごしたり、後からプロセスや手法自体に間違いがあることが発覚して、作業やシミュレーションを何度も何度もやり直す必要に迫られた。特に、夏休みの後半は、突き合った問題の解決方法が見つからず、自分からの指示が二転三転するなか、似たような作業を何十回も繰り返してもらったにも関わらず(!)、ジャネットは嫌な顔をせず、指示に従い研究を推進してくれた。
最終的には、『多少の問題点は残っているが、一つの研究ストーリを作り上げることができた。数点の懸念事項をクリアできれば、面白い論文へ発展できるのでは?』というレベルへ到達できたと思う。ほぼ0からスタートで、僅か10週間でここまでもっていければ十分でしょう!というのが自己評価。
自分のリードは60点であったが、ジャネットの働きは95点と言えよう。
こんな彼ら・彼女らを、時給$10.00で350時間も雇用できる機会なんて、滅多にないであろう。しかもその資金は、大学当局(今回は、ハーバード環境研究センター)が用意してくれる。研究室は場とテーマを与えてるだけ。研究室にとっては何ともありがたい制度だ。
この制度のお陰で、普段接することが少ない学部生と交流をすることができた。その過程で「ハーバード学部生の姿」を垣間見ることができた。やはりハーバードの中でも、学部生は特殊(貴重)な存在であり、大学院生とも少々扱いが違うことが多い。研究員として大学院に所属している限り、学部生との接触の機会は少ないが、Peterのお陰で、卒論生の手伝い(4月17日)をやらせてもらったりと、何かと学部生と交流する機会を頂いている。
非常に興味深い学部生の実態(!?)については、機会があれば改めて書きたい。
来週からは、新学期(新年度!)の始まりだ!
自分も新入生に戻ったつもりで(図々しすぎ?)、新たな気持ちで再スタートしよう!
謝辞:本研究の推進に当たっては、Arc Hydro本(現在出版準備中)の編者の一人であるHydro specialistのT氏に多大なアドバイスをいただきました。T氏のアドバイスがなかったら、ジャネットをさらに路頭に迷わせてしまったかもしれない…。T氏の親切かつ的確なアドバイスに感謝です!
≪写真・上 Peter(右から3番目)の両脇にいるのがアントニオとジャネット≫
≪写真・中・下 新学期が近付くにつれて賑やかになっていくキャンパス。ロー・スクールの学食にて(外と中)≫
従って、5月下旬からサマー・リサーチ・アシスタント(その1・その2)として働いていたジャネットとアントニオにとって、今日はPeter Rogers研所属の最終日。
その2で少し触れたが、ハタチ前後のやる気に満ち溢れた学部生が、大学院の研究室に所属することは、研究自体の推進を促すだけではなく、研究室全体の活性化に大きく貢献した。
彼ら二人が毎日研究室にやってきて、朝から夕方まで研究する姿は、周りの大学院生に大きな刺激を与えるだけなく、若人(?)から大御所の教授まで、みんなで和む雰囲気を作っている気がした。やはり米国といえども、多くの大学院生にとって、教授は絶対の神のような存在であるが、若い学部生にとっては教授なんて、ただのおっさん、おじさんみたいなもの(昔は自分もそう思っていた)。そんな彼らは、年齢や立場に関係なく、自由に議論したり、遊んだりする環境を自然に生み出したと言える。
もちろん、ジャネットとアントニオのパーソナリティによるところが大きいだろうし、加えて夏休みということで、教授や院生自体にも(通常セメスター時と比べて)時間的余裕があったことも大きいであろうが、みんなで食事に行ったり、アパートへ行ったり、スポーツをして遊ぶ機会が大幅に増えた。
大学当局は、このような波及効果まで狙っていたのか知らないが、サマー・リサーチ・アシスタント制度の意義は、Peter Rogers研にとても大きかったと思われる。
ジャネットには全10週間、とても頑張ってもらった。
もちろん、ハーバードにいる方はみんなものすごい才能を持っているが、やはり学部生の高い能力には驚かされっぱなしだった。個人的には、「とてもハタチ前後には思えない。大学院後期課程の学生もしくはそれ以上の研究遂行能力を持っている」という印象であった。ジャネットは応用数学、アントニオは物理学を専攻しているので、特に理科系の基礎学力が高かったのであろう。加えて、メンタル面でも、立派な大人であった。
Peterの配慮によって、自分がジャネットのプロジェクトを担当させてもらったのだが、
自分にとっても全く未知の研究テーマであったため、この数ヶ月間は試行錯誤の連続だった。
具体的には、自分で研究計画を立て、研究プロセスを設計し、それを実現するための手法やデータを用意して、実際の作業は彼女に進めてもらった。その中で、予期せぬエラーや不具合が起きれば、問題解決の方法や回避策を提示しなければならない。時には、一緒に研究手法の妥当性を議論しながら、常に“手探り”状態でのリードのもと、研究を進めて行った。
実際は、自分の目論みどおりにスムーズに研究が進む訳もなく、未解決問題を残したまま数日をやり過ごしたり、後からプロセスや手法自体に間違いがあることが発覚して、作業やシミュレーションを何度も何度もやり直す必要に迫られた。特に、夏休みの後半は、突き合った問題の解決方法が見つからず、自分からの指示が二転三転するなか、似たような作業を何十回も繰り返してもらったにも関わらず(!)、ジャネットは嫌な顔をせず、指示に従い研究を推進してくれた。
最終的には、『多少の問題点は残っているが、一つの研究ストーリを作り上げることができた。数点の懸念事項をクリアできれば、面白い論文へ発展できるのでは?』というレベルへ到達できたと思う。ほぼ0からスタートで、僅か10週間でここまでもっていければ十分でしょう!というのが自己評価。
自分のリードは60点であったが、ジャネットの働きは95点と言えよう。
こんな彼ら・彼女らを、時給$10.00で350時間も雇用できる機会なんて、滅多にないであろう。しかもその資金は、大学当局(今回は、ハーバード環境研究センター)が用意してくれる。研究室は場とテーマを与えてるだけ。研究室にとっては何ともありがたい制度だ。
この制度のお陰で、普段接することが少ない学部生と交流をすることができた。その過程で「ハーバード学部生の姿」を垣間見ることができた。やはりハーバードの中でも、学部生は特殊(貴重)な存在であり、大学院生とも少々扱いが違うことが多い。研究員として大学院に所属している限り、学部生との接触の機会は少ないが、Peterのお陰で、卒論生の手伝い(4月17日)をやらせてもらったりと、何かと学部生と交流する機会を頂いている。
非常に興味深い学部生の実態(!?)については、機会があれば改めて書きたい。
来週からは、新学期(新年度!)の始まりだ!
自分も新入生に戻ったつもりで(図々しすぎ?)、新たな気持ちで再スタートしよう!
謝辞:本研究の推進に当たっては、Arc Hydro本(現在出版準備中)の編者の一人であるHydro specialistのT氏に多大なアドバイスをいただきました。T氏のアドバイスがなかったら、ジャネットをさらに路頭に迷わせてしまったかもしれない…。T氏の親切かつ的確なアドバイスに感謝です!
≪写真・上 Peter(右から3番目)の両脇にいるのがアントニオとジャネット≫
≪写真・中・下 新学期が近付くにつれて賑やかになっていくキャンパス。ロー・スクールの学食にて(外と中)≫
2008年9月5日金曜日
シゲキ
ハーバード大の日本人教員(Faculty)は極めて少ない。
特に、医薬系や日本研究のグループを除くと、片手で数える程度かもしれない。
その一人のA氏とは、アイスパーティで知り合った研究者を介して知り合いになり、その後親しくさせて頂いている。A氏は、自分とほぼ同じ年齢の女性であるが、約3年前からハーバードのアシスタント・プロフェッサーを務めている。30そこそこで、ハーバードのアシスタント・プロフェッサーに就任するのは、並大抵のことではない。
A氏のプロフィールを見ると、これまでの足取りは極めて輝かしい。
学生のころから「Nature」、「Science」、その他、世界トップレベルの科学雑誌に論文が掲載され、米国内外の名門大学・研究所を渡り歩いてきた。自然科学系の研究者としては最高の経歴と言えよう。
しかし、そんな実績を鼻にかけることは決してなく、普段のA氏はとても謙虚で自然体。研究だけでなく、音楽やスポーツを楽しんだりと、普段の生活もバランスがとれている雰囲気だ。
「こういうお方が、若くしてハーバードのFacultyになるのね」と、“格”(育ち?)の違いを感じずにはいられない。
A氏とは、以前からいろいろな場面でお話をしてきたが、本日、久しぶりに長く話をする機会があった。いろいろな話を聞かせてもらう中で、「ハーバードで若くしてFacultyを務めるA氏は、やはり尋常ではない努力をしてきている」、その一端を垣間見れた気がする。
もちろん、本人の資質や育った環境の影響も大きく、本人も自分は運がいいと言ってた。そして、その多くは、本人にとっては努力と感じていないことなども沢山含まれており、決して自分の努力をアピールしていた訳ではない。しかし、聞いている自分にとっては、「そこまでやっているんだ…。」と目から鱗が落ちることが多かった。自分のような凡人に比べると、これまでの人生で並々ならぬ努力をしている、そう感じずにはいられなかった。
一見、順風満帆な人生を送っているように思われるが、多くの困難を乗り越えて、様々なことに挑戦し続けながら、ここまで辿りついているのである。もちろん、自分一人の力ではなく、家族や恩師など周囲の支えによって、今の自分があることを強く認識している。その上、今でも昔の恩師とのつながりを大事にし、継続的に連絡を取り合っている点は、頭が下がる。
A氏の話を聞くなかで、「自分ってぬるいなぁ!」。
何度もそう思った。
自分は今まで、最大限の努力を払ってきたか?それは、質・量ともに「とてつもない」ものであったか?頭で考えるだけではなく、本気でアクションを起こしてきたか?お世話になった方々への感謝の気持ちを持ち続け、それを継続的に伝えているか?
先日、自分がボストンにやってきてからの7か月間に対して、簡易自己評価を行った。渡米後のノートに書かれた目標に対して、どの程度達成できたのかと(ええ、ただの自己満足です)。
結果、70点。
「まだまだ不十分だけれど、できる範囲でそれなりに頑張ってきたよね」。
(“プールで毎回2km泳ぐ!”とか、本業以外の達成率は高かった(笑))
しかし、今日のA氏との話を考慮して自己評価し直すと、
30点程度の評価であろう。
「もっと本気で時間を割けば、より目標へ近づけたでは?
考えるだけで、実際の行動に至っていないのでは?
気持ちは、言わないと伝わらないでしょ?」。
世界最高峰のジャーナルに多数の論文を掲載するA氏でも、論文の投稿過程で苦労することもあり、リジェクトされたり、批判や反論も多く、それなりの苦労を重ねているということを聞いて、少し安心した(笑)。
『(論文のレフェリーや周りの研究者は)あなたの研究に強い関心があるからこそ、叩きに来る。興味のない研究には見向きもしない。』
『何をやっても反論されるんだから、自分が本当に信じれることをだけを論文に書くようにしている。そうでないと、批判・反論に耐えられない』
A氏から出てくる言葉は、極めて自然体で、気負いなどは感じないが、自然科学分野の最先端で戦い続ける研究者としての“芯の強さ”をその節々で感じることができた。
本当に、沢山のシゲキ(エネルギー)をいただいた。
ここ1ヶ月半、自分自身ことでモヤモヤし、少し低迷気味だったが、
A氏との会話を突破口にして、再び、そして今まで以上に走り出そう。
嘆くのは、“とてつもない”努力をした後に。
多少の努力で、「できない」「ダメかも」などとは口しない。
当分の座右の銘にして。
↓ たまには痛いくらいのシゲキも必要です。
特に、医薬系や日本研究のグループを除くと、片手で数える程度かもしれない。
その一人のA氏とは、アイスパーティで知り合った研究者を介して知り合いになり、その後親しくさせて頂いている。A氏は、自分とほぼ同じ年齢の女性であるが、約3年前からハーバードのアシスタント・プロフェッサーを務めている。30そこそこで、ハーバードのアシスタント・プロフェッサーに就任するのは、並大抵のことではない。
A氏のプロフィールを見ると、これまでの足取りは極めて輝かしい。
学生のころから「Nature」、「Science」、その他、世界トップレベルの科学雑誌に論文が掲載され、米国内外の名門大学・研究所を渡り歩いてきた。自然科学系の研究者としては最高の経歴と言えよう。
しかし、そんな実績を鼻にかけることは決してなく、普段のA氏はとても謙虚で自然体。研究だけでなく、音楽やスポーツを楽しんだりと、普段の生活もバランスがとれている雰囲気だ。
「こういうお方が、若くしてハーバードのFacultyになるのね」と、“格”(育ち?)の違いを感じずにはいられない。
A氏とは、以前からいろいろな場面でお話をしてきたが、本日、久しぶりに長く話をする機会があった。いろいろな話を聞かせてもらう中で、「ハーバードで若くしてFacultyを務めるA氏は、やはり尋常ではない努力をしてきている」、その一端を垣間見れた気がする。
もちろん、本人の資質や育った環境の影響も大きく、本人も自分は運がいいと言ってた。そして、その多くは、本人にとっては努力と感じていないことなども沢山含まれており、決して自分の努力をアピールしていた訳ではない。しかし、聞いている自分にとっては、「そこまでやっているんだ…。」と目から鱗が落ちることが多かった。自分のような凡人に比べると、これまでの人生で並々ならぬ努力をしている、そう感じずにはいられなかった。
一見、順風満帆な人生を送っているように思われるが、多くの困難を乗り越えて、様々なことに挑戦し続けながら、ここまで辿りついているのである。もちろん、自分一人の力ではなく、家族や恩師など周囲の支えによって、今の自分があることを強く認識している。その上、今でも昔の恩師とのつながりを大事にし、継続的に連絡を取り合っている点は、頭が下がる。
A氏の話を聞くなかで、「自分ってぬるいなぁ!」。
何度もそう思った。
自分は今まで、最大限の努力を払ってきたか?それは、質・量ともに「とてつもない」ものであったか?頭で考えるだけではなく、本気でアクションを起こしてきたか?お世話になった方々への感謝の気持ちを持ち続け、それを継続的に伝えているか?
先日、自分がボストンにやってきてからの7か月間に対して、簡易自己評価を行った。渡米後のノートに書かれた目標に対して、どの程度達成できたのかと(ええ、ただの自己満足です)。
結果、70点。
「まだまだ不十分だけれど、できる範囲でそれなりに頑張ってきたよね」。
(“プールで毎回2km泳ぐ!”とか、本業以外の達成率は高かった(笑))
しかし、今日のA氏との話を考慮して自己評価し直すと、
30点程度の評価であろう。
「もっと本気で時間を割けば、より目標へ近づけたでは?
考えるだけで、実際の行動に至っていないのでは?
気持ちは、言わないと伝わらないでしょ?」。
世界最高峰のジャーナルに多数の論文を掲載するA氏でも、論文の投稿過程で苦労することもあり、リジェクトされたり、批判や反論も多く、それなりの苦労を重ねているということを聞いて、少し安心した(笑)。
『(論文のレフェリーや周りの研究者は)あなたの研究に強い関心があるからこそ、叩きに来る。興味のない研究には見向きもしない。』
『何をやっても反論されるんだから、自分が本当に信じれることをだけを論文に書くようにしている。そうでないと、批判・反論に耐えられない』
A氏から出てくる言葉は、極めて自然体で、気負いなどは感じないが、自然科学分野の最先端で戦い続ける研究者としての“芯の強さ”をその節々で感じることができた。
本当に、沢山のシゲキ(エネルギー)をいただいた。
ここ1ヶ月半、自分自身ことでモヤモヤし、少し低迷気味だったが、
A氏との会話を突破口にして、再び、そして今まで以上に走り出そう。
嘆くのは、“とてつもない”努力をした後に。
多少の努力で、「できない」「ダメかも」などとは口しない。
当分の座右の銘にして。
↓ たまには痛いくらいのシゲキも必要です。
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