2008年9月12日金曜日

サマー・リサーチ・プロジェクト その3: 終了

今日は、ハーバード大の夏休みの最終日。

従って、5月下旬からサマー・リサーチ・アシスタント(その1その2)として働いていたジャネットとアントニオにとって、今日はPeter Rogers研所属の最終日。

その2で少し触れたが、ハタチ前後のやる気に満ち溢れた学部生が、大学院の研究室に所属することは、研究自体の推進を促すだけではなく、研究室全体の活性化に大きく貢献した。

彼ら二人が毎日研究室にやってきて、朝から夕方まで研究する姿は、周りの大学院生に大きな刺激を与えるだけなく、若人(?)から大御所の教授まで、みんなで和む雰囲気を作っている気がした。やはり米国といえども、多くの大学院生にとって、教授は絶対の神のような存在であるが、若い学部生にとっては教授なんて、ただのおっさん、おじさんみたいなもの(昔は自分もそう思っていた)。そんな彼らは、年齢や立場に関係なく、自由に議論したり、遊んだりする環境を自然に生み出したと言える。
もちろん、ジャネットとアントニオのパーソナリティによるところが大きいだろうし、加えて夏休みということで、教授や院生自体にも(通常セメスター時と比べて)時間的余裕があったことも大きいであろうが、みんなで食事に行ったり、アパートへ行ったり、スポーツをして遊ぶ機会が大幅に増えた。

大学当局は、このような波及効果まで狙っていたのか知らないが、サマー・リサーチ・アシスタント制度の意義は、Peter Rogers研にとても大きかったと思われる。


ジャネットには全10週間、とても頑張ってもらった。
もちろん、ハーバードにいる方はみんなものすごい才能を持っているが、やはり学部生の高い能力には驚かされっぱなしだった。個人的には、「とてもハタチ前後には思えない。大学院後期課程の学生もしくはそれ以上の研究遂行能力を持っている」という印象であった。ジャネットは応用数学、アントニオは物理学を専攻しているので、特に理科系の基礎学力が高かったのであろう。加えて、メンタル面でも、立派な大人であった。


Peterの配慮によって、自分がジャネットのプロジェクトを担当させてもらったのだが、
自分にとっても全く未知の研究テーマであったため、この数ヶ月間は試行錯誤の連続だった。

具体的には、自分で研究計画を立て、研究プロセスを設計し、それを実現するための手法やデータを用意して、実際の作業は彼女に進めてもらった。その中で、予期せぬエラーや不具合が起きれば、問題解決の方法や回避策を提示しなければならない。時には、一緒に研究手法の妥当性を議論しながら、常に“手探り”状態でのリードのもと、研究を進めて行った。

実際は、自分の目論みどおりにスムーズに研究が進む訳もなく、未解決問題を残したまま数日をやり過ごしたり、後からプロセスや手法自体に間違いがあることが発覚して、作業やシミュレーションを何度も何度もやり直す必要に迫られた。特に、夏休みの後半は、突き合った問題の解決方法が見つからず、自分からの指示が二転三転するなか、似たような作業を何十回も繰り返してもらったにも関わらず(!)、ジャネットは嫌な顔をせず、指示に従い研究を推進してくれた。

最終的には、『多少の問題点は残っているが、一つの研究ストーリを作り上げることができた。数点の懸念事項をクリアできれば、面白い論文へ発展できるのでは?』というレベルへ到達できたと思う。ほぼ0からスタートで、僅か10週間でここまでもっていければ十分でしょう!というのが自己評価。
自分のリードは60点であったが、ジャネットの働きは95点と言えよう。


こんな彼ら・彼女らを、時給$10.00で350時間も雇用できる機会なんて、滅多にないであろう。しかもその資金は、大学当局(今回は、ハーバード環境研究センター)が用意してくれる。研究室は場とテーマを与えてるだけ。研究室にとっては何ともありがたい制度だ。


この制度のお陰で、普段接することが少ない学部生と交流をすることができた。その過程で「ハーバード学部生の姿」を垣間見ることができた。やはりハーバードの中でも、学部生は特殊(貴重)な存在であり、大学院生とも少々扱いが違うことが多い。研究員として大学院に所属している限り、学部生との接触の機会は少ないが、Peterのお陰で、卒論生の手伝い(4月17日)をやらせてもらったりと、何かと学部生と交流する機会を頂いている。

非常に興味深い学部生の実態(!?)については、機会があれば改めて書きたい。


来週からは、新学期(新年度!)の始まりだ!
自分も新入生に戻ったつもりで(図々しすぎ?)、新たな気持ちで再スタートしよう!



謝辞:本研究の推進に当たっては、Arc Hydro本(現在出版準備中)の編者の一人であるHydro specialistのT氏に多大なアドバイスをいただきました。T氏のアドバイスがなかったら、ジャネットをさらに路頭に迷わせてしまったかもしれない…。T氏の親切かつ的確なアドバイスに感謝です!


≪写真・上 Peter(右から3番目)の両脇にいるのがアントニオとジャネット≫
≪写真・中・下 新学期が近付くにつれて賑やかになっていくキャンパス。ロー・スクールの学食にて(外と中)≫