2009年1月24日土曜日

映画 『スラムドッグ$ミリオネア』

2004年、インドのデリー(首都)とアーグラー(タージマハール)を数日間、旅行する機会があった。
今まで自分が訪問した国や街の中では、インドが断トツ、エネルギッシュだ。

街中を歩いていると、
オート・リクシャー(三輪タクシー)や自転車タクシーの勧誘から、色々な企みを持った(!?)大人から子供まで、ワンサカ人が寄ってくる。東南アジアでこれらの人に寄ってこられるのとは、量と質で大きく異なる。

会う人会う人、みんな嘘つきだし(?)、
数百メートル先へ行くのに、もの凄い時間がかかることもあった。
当然ながら、最初に交渉した値段どおりで、
コトが済まないことも多く、イチイチ面倒くさい。

無理やり連れて行かれたカーペット屋に入った瞬間、
玄関の鍵がかかりカーテンを閉められ、数人に囲まれた中、
怪しい飲み物が運ばれてきたり(もちろん、飲まずに逃げた)、
宿泊先のホテルでは、夜中3時に、部屋の鍵が突然外側から空けられ、
ホテルの従業員らしき2人が部屋に侵入してきたり(若干の身の危険を感じた)。


今考えても、インドの体験は滅茶苦茶なことが多かったが(笑)、なぜか、インド人は憎めないし、インドに対して悪い感情は全く持っていない。

むしろ、自分としては、
「必死に生きる人々」の姿を目の当たりにすることで、先進国の人間(自分)が忘れかけている「生き抜くことの厳しさ」を考えなおすことができた。

インドは、そういった“人間の根底にある、何か動物的なもの”を直に感じられるところが、とても刺激的、魅力的である。


さて、前置きが長くなったが、『スラムドッグ$ミリオネア』(Slumdog Millionaire)は現在、急速に発展するインド・ムンバイを舞台にした映画であり、今年のゴールデン・グローブ賞で最多4部門を受賞している。(アカデミー賞は、10部門ノミネート)

敢えて荒く内容を紹介すると、ムンバイのスラム街で育った兄弟が、それぞれの人生をたくましく生き延びながら、最終的に、「クイズ・ミリオネア(?)」にて一攫千金の機会を掴む。
そしてそこには、恋愛が、、、という物語である。

エンディングに向けて、複数のストーリーが収束していく脚本は、見事であった。

そして何より、劇的な映像と躍動感あふれる音楽で、急速に移り変わるインドの「今」が映し出されているところが、大きな見どころだ。

監督らスタッフは、一年間ムンバイに住みこみ、映画撮影に取り組んだという。

スラムでの生活や、人で溢れる狭い路地、ゴミの山で戯れる子供たち、そして急速に高度化・高層化する新市街地など、混沌とするインドの現状を、様々な角度から映像として切り取り、ストーリーに絶妙に絡ませている。
地面すれすれのロー・アングルや上空からの俯瞰アングル(?)など
巧みなカメラ・ワークやクロスカッティング技法を駆使しながら、
変わりゆく“インドの今”を2時間に凝縮している。


インドの貧困や虐待、犯罪、宗教問題などは、言葉(知識)として知ってはいるが、やはり実態のイメージは持ちづらい。

実際、自分もインドへ行った時、ヘビーじゃないスラムへ近づいて行ったが(そんなのあるのか?)、
やはり内部に入るのは不可能(きっと部外者は入ってはいけない)。
そして、入ったところで、その実態に迫ることは、現地の友人でも居ない限り無理。

しかしこの映画が伝える、実地のリアルな映像は力強く、
訴えかけるものが大きい。


ブラピ主演の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(アカデミー賞・最多13部門ノミネート、ゴールデン・グローブ賞・最多ノミネート[最終的に受賞なし])も良いストーリーで面白かったけど、映画化はやや難しい内容だと感じた(どちらかというと小説向き?しかし、そこへ挑んだ功績は大きい)。

その点、『スラムドッグ$ミリオネア』は映画向きの内容であり、それは、高度な映画技法を駆使して、現実の映像が生きてくるように作り上げた、製作チームの手腕の賜物なのかもしれない。


まとめとして、
実際のスラム街など(リアルなセット)の映像と、
躍動的な音楽を織り交ぜて、
スリリングで緻密なストーリーがスピーディに展開される、
完成度の高い映画である。
やや目を覆いたくなる場面もあるが、
臨場感と緊張感を持ちながら2時間をフルに楽しめた。


これから米国・欧州・中国と並ぶ、
世界の大国へ発展するインドの「今」を知る上で、
欠かせない映画と言えるかもしれない。

監督は「トレイン・スポッティング」のダニー・ボイル。斬新な映像と軽快な音楽で繰り広げられる、『スラムドッグ$ミリオネア』の刺激的でスピーディーな展開は、“うむうむ納得”という感じだ。

この映画は事前にあらすじを知らない方が楽しめる
個人的には、公式Webサイトなどで「予告編」映像を見ることはお勧めしない


久しぶりに、
「もう一度、映画館で見たい!」と思う、
見ごたえのある映画だった。

いや、それ以上に、
また、「インドへ行きたい熱」が高まってきた!


≪写真・2004年のデリーとアーグラー: 映画では、活き活きとした街の深い部分が楽しめる≫

↓ 大学入学時(建築学科)の一番最初授業で、“建築家を目指す人が読むべき本”に『深夜特急』が入っていた。当時は建築家に全く興味なかったので(入学直後なのに!)、本にも全く関心なかったが、その当時、この本を読みインドへ行っていたら、今とは全く違う人生を歩んでいただろう。
まあ、それでも建築家になっていないだろうけど(笑)。

1 件のコメント:

aki さんのコメント...

先日、ニューヨークで2回目を見てきた。
やはりこの映画は劇場で見るのがいい。